神祇省

神祇省は、明治4年8月8日（1871年9月22日）に、神祇の祭祀と行政を管掌する機関として、律令制以来の神祇官に代わって設置されました。しかし、その存在期間はわずか半年と非常に短いものでした。

形式上、神祇官は太政官よりも上位に位置づけられていましたが、神祇省は太政官の一機関に格下げられました。このことから、一見すると地位が低下したように見えますが、実際には、大教宣布の理念に基づいた天皇による祭政一致、ひいては神道の国家宗教化を目指す政府の方針が背景にありました。政府は神祇省を通じて神道への関与を強化しようとしたのです。

神祇省には神祇卿は設置されず、代わりに神祇大輔に福羽美静が任命されました。福羽は、神祇行政の実務を担い、政府の方針を推進する役割を担いました。

神祇省は、設置からわずか半年後の明治5年3月14日（1872年4月21日）に、教部省へと改称されました。これは、神祇官末期に設置された宣教使による大教宣布をさらに強化するための方策でした。教部省は、神道を中心とした宗教政策を推進し、国民教化を図ることを目的としていました。

神祇省の廃止と教部省への改組に伴い、宮中祭祀の事務は分離され、式部寮に移管されることになりました（3月15日通達、同3月23日(1872年4月30日)第92号布告）。式部寮は、皇室に関する儀式や典礼を司る機関であり、宮中祭祀の重要性が高まるにつれて、その役割も重要になっていきました。

当初、式部寮は太政官直属でしたが、1875年（明治8年）4月に宮内省に移管されました（太政官第59号）。しかし、同年12月には再び正院に戻され（太政官第182号）、1877年（明治10年）9月には再度宮内省の管轄となりました（太政官達第64号）。式部寮の所属が短期間に二転三転した背景は明確ではありませんが、宮中祭祀をめぐる政府内の権力関係や政策の変化が影響していたと考えられます。

このように、神祇省は短期間の存在でしたが、明治政府の宗教政策、特に神道を国家体制の中核に据えようとする意図を象徴するものでした。その後の教部省の設置や式部寮の管轄変更など、一連の動きは、明治政府が国家[[神道]]の確立に向けて試行錯誤を重ねていた過程を示すものと言えるでしょう。

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