神西湖

神西湖：島根の秘境、汽水湖の物語

島根県出雲市西部に位置する神西湖（じんざいこ）は、三瓶山を望む静かな汽水湖です。湖畔にはアシやガマが広がり、豊かな自然に恵まれた環境は、多くの生き物たちの生息地となっています。特に、シジミの産地として知られており、2005年度には約1万7千トンものシジミが収穫され、全国の湖沼中6位、単位面積あたりの収穫量では1位を誇るほどです。鳥取県の湖山池と姉妹湖として友好関係を結んでいます。

神西湖の地理的特徴

神西湖は、十間川が流入し、差海川が流出する汽水湖です。湖の西側には、温泉地として名高い湖陵温泉が湧き出ています。興味深いことに、河川法上では、差海川と神西湖は共に十間川として指定されています。この地理的特徴が、神西湖の生態系や歴史に深く関わっていると言えるでしょう。

歴史：変化に富む神西湖

神西湖の歴史は古く、『出雲国風土記』には「神門水海」として記載が見られます。当時の神門水海は現在の神西湖よりもはるかに大きく、周囲長は現在の約3倍にも及んだとされています。その周辺地域は「滑狭（なめさ）」と呼ばれ、大国主大神の后神が誕生した地として伝承されています。

縄文時代: 現在の宍道湖を含む広い湖域は、日本海と繋がった大きな湾でした。斐伊川と神戸川の堆積作用によって、湾は次第に埋め立てられ、東側と西側に分断されます。東側が宍道湖の原型、西側が神西湖の原型となりました。

弥生時代: 堆積作用の進行により、湾はさらに縮小し、日本海と完全に分断されて汽水湖となります。

江戸時代: 神西湖は北部が埋め立てられ縮小しました。1635年と1636年の大洪水を契機に、斐伊川と神戸川の川筋が変更され、斐伊川は宍道湖に、神戸川は直接日本海に注ぐようになりました。これにより、神西湖と日本海を繋ぐ河川は消滅し、大雨のたびに氾濫するようになりました。そのため、湖西側に排水路が開削され、これが現在の差海川です。また、新田開発に伴い、東側から十間川が開削されました。これらの改変を経て、神西湖は現在の姿となりました。

神西湖九景：景勝地としての魅力

近江八景にならって、江戸時代中期には神西湖九景が選定されました。これらは、神西湖の美しい景観を物語っており、当時の風情を感じさせてくれます。

田中山の清嵐
正久寺の晩鐘（現在は跡地のみ）
鵜来の秋月
掛前の帰帆
蛇島の暮雪
差海の夕照
水原の落雁
椎崎の夜雨
* 小野木の松（1939年の旱魃で枯死）

神西湖九景は、神西湖の景観の多様性と、人々の豊かな感性を物語っています。これらの景観は、現在も神西湖の魅力を構成する重要な要素となっています。

まとめ

神西湖は、その歴史と自然の織りなす美しい景観、そして豊かな生態系を持つ貴重な汽水湖です。シジミの産地としてだけでなく、歴史的にも文化的にも重要な場所として、これからも大切に保護していくべき存在と言えるでしょう。

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