神谷和也

神谷 和也（かみや かずや）氏は、1957年7月20日に静岡県で生まれた、日本を代表する経済学者です。特にミクロ経済学と数理計画法の分野で顕著な業績を挙げており、東京大学名誉教授、神戸大学経済経営研究所の元教授を務めました。

来歴と学究の道

静岡県出身の神谷氏は、浜松北高等学校を卒業後、京都大学経済学部に入学しました。当時の京都大学経済学部では、ミクロ経済学やマクロ経済学の基礎科目が十分ではなかったため、彼は独学で不動点計算法や微分位相幾何学といった高度な数学的手法を習得しました。当初は工学部への転学も視野に入れていましたが、事務手続き上の手違いにより実現せず、経済学の研究に進むこととなります。

京都大学を卒業した後、大阪大学大学院経済学研究科で学び、さらにイェール大学大学院経済学部へと進学しました。大学院では、学部時代に独学で培った数学的な能力を存分に発揮し、一般均衡理論、特に収穫逓増問題に焦点を当てた研究に取り組みました。1986年12月には、イェール大学から経済学の博士号（Ph.D.）を取得しています。

職歴と主な研究分野

博士号取得後、神谷氏は日本の学術機関でのキャリアをスタートさせます。1987年10月には大阪大学経済学部助教授に就任し、その後、同学社会経済研究所助教授を務めました。1995年には東京大学経済学部助教授に転じ、1996年からは東京大学大学院経済学研究科助教授、1999年1月には同研究科の教授に昇進しました。

東京大学での長きにわたる在任中、彼は研究活動の傍ら、大学の運営にも関わり、2015年1月から2016年3月まで同大学の副学長を務めました。2016年4月からは神戸大学経済経営研究所の教授として研究教育活動を続けました。その後、東京大学名誉教授の称号が授与され、2021年4月からは東京大学特命教授としても活動しています。

神谷氏の主要な研究テーマは、ミクロ経済学における一般均衡理論と、それを分析するための数理計画法です。中でも、非凸性（例えば、規模の経済や生産技術の非線形性）が存在する複雑な経済状況における一般均衡の存在を数学的に厳密に証明した研究は、経済学理論における重要なブレークスルーとして国際的に高く評価されています。この独創的かつ影響力の大きい業績に対し、2000年度には日本の経済学分野で最も権威ある賞の一つである日本経済学会中原賞が授与されました。

主要な研究成果

神谷氏の研究成果は、数多くの学術論文として発表されています。代表的なものとして、『Journal of Mathematical Economics』、『Econometrica』、『Mathematics of Operations Research』、『Journal of Economic Theory』といった国際的に著名な学術誌に掲載された論文が挙げられます。これらの論文では、一般均衡の存在と一意性、価格調整プロセスの安定性、非線形方程式の解法アルゴリズム、最適公共料金設定などが数学的に分析されており、彼の研究の広範さと深さを示しています。

神谷和也氏は、数学的な厳密さを追求した分析手法を用いて、経済学理論の発展に大きく貢献してきました。特に、非凸性という現実の経済が持つ複雑な要素を取り入れた一般均衡分析は、理論経済学の研究に新たな地平を切り開きました。その教育者としての貢献と合わせ、日本の経済学界におけるその存在感は非常に大きいと言えます。

もう一度検索