神谷研二

神谷研二（かみや けんじ）

プロフィール

神谷研二は、1950年生まれの日本の医学者です。広島大学原爆放射線医科学研究所長を務めています。専門は放射線生物学で、特に放射線誘発癌の分子機構の解析や低線量被曝の影響に関する研究に取り組んでいます。

略歴

1977年に広島大学医学部を卒業後、同大学医学部の助手となります。その後、広島大学原爆放射能医学研究所の助手、助[[教授]]を経て、2001年から同研究所の所長に就任しました。2004年からは、現在の広島大学原爆放射線医科学研究所長を務めています。

また、2011年には福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任し、福島県立医科大学の特命教授や副学長も務めました。この間、1982年から1987年まで米国ウィスコンシン大学に留学し、放射線生物学の研究に従事しました。

内閣府原子力安全委員会被ばく医療分科会委員、広島地区緊急被ばく医療ネットワーク代表幹事、放射線被曝者医療国際協力推進協議会理事なども兼務しています。

放射性物質使用量改ざん問題

2000年から2003年にかけて、神谷氏らの研究グループは、放射性ヨウ素を用いた動物実験において、放射線障害防止法で定められた一日の許容量を大幅に超える放射性物質を使用していたことが発覚しました。実験データを改ざんし、許容範囲内で作業したように偽っていたことが明らかになっています。この実験により、被曝した研究者の中には体調を崩したり、若くして癌で亡くなった人もいたとされています。しかし、広島大学は神谷氏に対して訓告処分にとどめました。

福島県放射線健康リスク管理アドバイザーとしての活動とその影響

2011年の福島第一原子力発電所事故後、神谷氏は福島県放射線健康リスク管理アドバイザーに就任しました。山下俊一氏らと共に、「市民との対話を繰り返して放射線の恐怖を取り除くこと」を重視し、放射線による健康への影響について楽観的な見解を強調しました。

福島県民健康管理調査検討委員会の委員や、福島県立医科大学副学長も務めましたが、その活動に対しては批判も多くありました。反原発活動家やルポライターからは、福島県内の児童の被曝安全説を触れ回ったとして、業務上過失致傷罪で刑事告発されました。また、福島県内の被災者を中心としたグループからも、業務上過失致死傷と公害犯罪処罰法違反の疑いで刑事告訴されています。

研究分野

神谷氏の研究分野は、放射線誘発癌の分子機構解析、免疫学、環境影響評価・環境政策、分子生物学など多岐にわたります。特に、放射線によるDNA損傷修復やアポトーシスに関する研究、低線量被曝と発癌に関する研究に力を入れています。

主な論文・寄稿文

神谷研二, 「Diethylstilbestrol(DES)誘発腫瘍の発生,増殖およびその抑制に関する実験的研究 : DESによるラット肝腫瘍誘発機構を中心として」 広島大学 博士論文, 1987年
神谷研二, CLIFTON KELLY H., GOULD MICHAEL N., YOKOROKENJIRO「Control of Ductal vs. Alveolar Differentiation of Mammary Clonogens, Susceptibility to Radiation-Induced Mammary Cancer」『Journal of Radiation Research』, 1991年
神谷研二「低線量被曝と発癌 : 乳癌を中心に」『日本放射線技術学会雑誌』, 1994年
亭島淳, 安本博晃, 隅井雅晴, 増田雄司, 福田三郎, 高橋護, 小池則道, 碓井亞, 神谷研二「マウス肝癌におけるIGFBP-7遺伝子の発現低下」『ホルモンと臨牀』, 2000年
増田雄司, 神谷研二「誘発突然変異の分子機構」『放射線生物研究』, 2000年
亭島淳, 安本博晃, 隅井雅晴, 増田雄司, 福田三郎, 高橋護, 小池則道, 碓井亞, 神谷研二「放射線誘発マウス肝癌におけるIGFBP-rP1遺伝子の役割」『ホルモンと臨牀』, 2001年
神谷研二「インタビュールーム(501)広島県--神谷研二さん(広島大学原爆放射線医科学研究所所長)被ばく事故の医療体制作り」『厚生福祉』, 2002年
井倉毅, 神谷研二「放射線誘発DNA損傷修復およびアポトーシスにおけるTIP60ヒストンアセチル化酵素複合体の役割」『放射線生物研究』, 2002年
朴金蓮, 増田雄司, 神谷研二「損傷乗り越えDNA合成因子REV1のdCMP転移活性と突然変異誘発」『日本放射線影響学会大会講演要旨集』, 2006年
豊島めぐみ, 梶村順子, 渡辺敦光, 本田浩章, 増田雄司, 神谷研二「損傷乗り越えDNA合成酵素Rev1の発がんにおける役割」『日本放射線影響学会大会講演要旨集』, 2007年
笹谷めぐみ, 徐衍賓, 本田浩章, 濱崎幹也, 楠洋一郎, 渡邊敦光, 増田雄司, 神谷研二「放射線発がんとゲノム不安定性」『日本放射線影響学会大会講演要旨集』, 2011年
神谷研二「低線量放射線の人体影響と生体応答」『日本放射線影響学会大会講演要旨集』, 2011年
神谷研二「広島大学原爆放射線医科学研究所からの後障害研究成果の世界への発信」『広島医学』, 2012年
増田雄司, 笹谷めぐみ, 神谷研二「放射線によって誘発されるDNA損傷に対する複製後修復経路の機能解析」『広島医学』, 2012年



神谷研二は、放射線生物学の研究者として多くの業績を残す一方で、放射性物質の不正使用問題や福島原発事故後のアドバイザーとしての活動に対する批判など、様々な側面を持つ人物です。その功績と問題点を両面から理解することが重要です。

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