神道揚心流

神道楊心流について

神道楊心流（しんとうようしんりゅう）は、松岡克之助尚周によって創設された日本の柔術流派です。この流派は1864年5月1日に、天神真楊流の技術と戸塚派揚心流の特徴を取り入れ、さらには直心影流の理合を導入する形で、柔術の新たな道を模索しました。流派の創始者である松岡克之助は、旧黒田藩士としての経歴を持ち、幕末には講武所で修業を積んで幕臣として活躍しました。

松岡克之助は、剣術や槍術を千葉周作や榊原鍵吉から学び、また天神真楊流柔術の技も磯正智より教えを受けました。こうした多様な武道の要素を融合し、彼は神道楊心流を形成しました。流派の本拠地は常陸国真壁郡上野村に位置する神道館道場であり、ここには多くの弟子が集い、修練を重ねました。入門帳には3,000人以上の弟子が血判署名をし、免許を授与された者は786名に及びました。

流派の厳格な修行体系

神道楊心流の免許を取得するためには厳しい試練が待っており、乱取試合で講道館の五段相手に互角に戦える実力が求められました。また、切紙免許を得るためには、大日本武徳会や講道館の三段と同等の能力を発揮する必要がありました。日中戦争の時期からは神道揚心流柔道として、独自の審査会を開催し、資格認定を行いました。

流派は、その後松岡克之助の教えを受け継いだ二代目猪瀬元吉、三代目松岡龍雄によって引き継がれましたが、松岡龍雄が4代目を選出しなかったため、神道揚心流同門会が設立され、藤原稜三がその代表となりました。しかし、松岡龍雄存命中に4代目の指名が行われず、後継者が現れなかったことで、流派は活動を停止する運命にあります。

高村派新道楊心流の誕生

高村派新道楊心流は、小幡茂太系の神道楊心流として知られています。小幡茂太は最初に揚心古流を戸塚彦助から学び、その後1885年に松岡克之助の弟子となり、1995年には免許皆伝を得て独立しました。彼の後は、孫の高村雪義が流派を継承し、終戦後にはスウェーデンに渡り、さらにアメリカ・カリフォルニア州でも指導に当たりました。高村は2000年に72歳で亡くなり、その後彼から免許を得た門人は、タカギ イソ、David Maynard、Toby Threadgillといった人々です。

現在、Takamura ha Shindo Yoshinkai（高村派新道楊心会）はアメリカやヨーロッパ各地で活動を行っています。

流派の訓練内容

松岡克之助が運営していた道場では、夜間に行われる稽古が主で、特に乱取では寝技や絞技、関節技が重視されていました。乱取の後には、太刀を用いた形の稽古も行われ、木刀や真刀を用いるイベントが設けられることもありました。切紙免許の取得には71本の技術を身につける必要があり、目録免許では手技や活法、骨法が教授されるシステムが整えられていました。

流派の魅力はまた、直心影流剣術の教えも融合している点にあります。これは、剣術の門人にも伝えられ、実践の幅を広げています。

免許の系譜

神道楊心流には数多くの系統が存在します。松岡克之助から始まり、猪瀬元吉、松岡龍雄、藤原稜三を経て、流派はさまざまな形で発展しました。免許皆伝の門人は多く、今なお流派の伝承が続けられています。

明治から続くこの流派の歴史と技術は、日本の武道の奥深さを証明する無形の宝とも言える存在です。

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