神鉄有馬ユースピア

神鉄有馬ユースピア：実現しなかった壮大なレジャーランド計画

1980年代、神戸電鉄グループは神戸市北区有馬温泉近くに、『神鉄有馬ユースピア』という大型総合レジャーランドの建設を計画していました。神戸ポートアイランド博覧会（1981年開催）に合わせての開業を目指し、準備は着々と進められていました。各種雑誌や阪急電鉄の広報誌にも計画の詳細が掲載され、その実現が間近に迫っている様子が伝えられていました。

計画の概要と魅力

有馬温泉周辺では、有馬ます池や有馬ヘルスセンター、有馬ビューホテルなどのレジャー施設開発が既に進められており、神鉄有馬ユースピアはその集大成とも言うべき、壮大なプロジェクトでした。約21万平方メートルの広大な丘陵地を有効活用し、多様なレジャー施設とホテルが一体となった複合施設が構想されていました。

計画された主な施設は以下の通りです。

人工スキー場: 白色の人工芝に発泡スチロールと薬剤を散布した、当時としては日本最大規模の人工スキー場（幅40メートル、長さ540メートル、傾斜10度～25度）が計画されていました。ナイター設備も完備される予定でした。
ボブスレー場: 全長674メートル、高低差130メートルの1人乗りボブスレーコースが計画されていました。
シンボルタワー: 標高505メートルの地点に、高さ100メートルの超高層タワーが建設される予定でした。
野外音楽ステージ: 約1000人を収容できる大型の野外ステージも計画されていました。
ホテル: 神戸電鉄グループが有馬ビューホテルなどの運営ノウハウを生かし、ホテルを建設する計画でした。
エキシビションホール: コンサートやスポーツイベントなどに利用できるホールも計画されていました。
レストハウス: 休息施設も計画されていました。
遊歩道: プロジェクトに先立ち、1971年には既に水無山に1700メートルに及ぶ遊歩道が整備されていました。
* 新有馬千本桜: 1976年の神戸電鉄創立50周年記念事業として、ユースピア予定地周辺に山桜や染井吉野が植樹されました。

アクセス

最寄りの駅は神戸電鉄新有馬駅でした。このレジャーランド計画のために、新有馬駅は営業休止後も廃止を免れ、2013年まで存続しました。

計画の頓挫

神鉄有馬ユースピア計画は、残念ながら実現しませんでした。その理由については、公式な発表や詳細な記録は残されていません。しかし、建設費の高騰や、1970年代後半から1980年代初頭にかけての日本経済の変動、あるいは土地開発や環境問題に関する規制強化などが、計画頓挫の要因として考えられます。

計画が残した足跡

計画は頓挫したものの、遊歩道や新有馬千本桜など、現在も残る施設や植樹は、当時構想された壮大なレジャーランド計画の痕跡として、有馬温泉の歴史の一部を物語っています。また、神鉄有馬ユースピア計画は、高度経済成長期に実現を目指した大規模開発計画が、様々な要因によって頓挫する可能性を示す一例として、貴重なケーススタディとなっています。当時発行された資料や記録から、その壮大さ、そして実現しなかったことへの惜しみない想いが伝わってきます。

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