福井鉄道1形電車

福井鉄道1形電車：地方私鉄を支えた木造電車の歴史

福井鉄道1形電車は、1923年（大正12年）に誕生した、福井鉄道の前身である福武電気鉄道の車両です。同社の武生新（現在の福井市）と兵営（現在の福井市）を結ぶ路線の開業に合わせ、梅鉢鉄工所で3両が製造されました。地方私鉄においては当時としては大型の、全長15メートル級の4輪ボギー車でした。

木造車体の特徴と技術仕様

車体は木造で、ダブルルーフ構造という特徴的な屋根を持っていました。当時の技術水準を反映し、制御方式は直接制御、ブレーキは二管式のSME、台車はブリル27MCB-2という仕様でした。主電動機には、GE製のGE-269Cが採用されています。これらの仕様は、当時の地方私鉄の車両としては標準的なものでしたが、15メートルという車体長は、地方私鉄の車両としては大型に分類されました。

活躍と改造、そして廃車へ

開業後、1形電車は福井鉄道の路線で活躍しました。1933年（昭和8年）には福井市内線の開通に伴い、乗降しやすいように1段の手動ステップが取り付けられました。1947年（昭和22年）には、形式称号がデハ1形からモハ1形に変更されています。その後、昭和30年代には、老朽化対策として、外板が木造から鋼板に交換されるという大規模な改造が行われました。しかし、時代の流れとともに新型車両の導入が進み、老朽化が進んだ1形電車は順次廃車されることとなりました。モハ2が1961年（昭和36年）11月、モハ3が1963年（昭和38年）9月に廃車され、最後の1両であるモハ1も1968年（昭和43年）12月に廃車されました。これにより、福井鉄道1形電車は形式消滅しました。

地方私鉄における1形電車の意義

福井鉄道1形電車は、地方私鉄黎明期の技術水準を示す貴重な存在でした。木造という、現代では珍しい車体構造や、直接制御というシンプルな制御方式は、当時の技術的な制約を反映しています。しかし、その一方で、15メートルという車体長は、地方私鉄において輸送力向上への努力がなされていたことを示しています。また、戦後の改造によって鋼板外板化されるなど、長く活躍を続けるために様々な改良が加えられたことも注目に値します。1形電車は、福井鉄道の歴史、そして地方私鉄の歴史を語る上で、重要な役割を担った車両と言えます。

関連事項

福井鉄道1形電車の系譜をたどる上で、後継車両である福井鉄道10形電車についても合わせて知っておくと、福井鉄道の車両史をより深く理解することができるでしょう。これらの車両の歴史を調べることで、日本の地方鉄道の変遷を垣間見ることができるでしょう。

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