福岡市整形外科医院火災

福岡市整形外科医院火災について

2013年10月11日、福岡県福岡市博多区の「安部整形外科」で発生した火災は、10名もの尊い命を奪い、7名が負傷するという痛ましい結果となりました。この火災は、2009年3月に群馬県渋川市の老人施設で10名が亡くなって以来、国内で2桁の死者を出した火災事故であり、医療機関に限れば、1973年3月の福岡県済生会八幡総合病院の火災以来、実に40年ぶりの惨事となりました。

火災発生の経緯

午前2時20分頃、夜勤中の看護師が1階処置室付近から火が出ているのを発見しました。看護師は、すぐに病院外へ出て、通りがかったタクシー運転手に110番通報を依頼。警察から消防へ通報が転送され、20台の消防車が出動しました。約2時間の消火活動により鎮火しましたが、この火災により、入院患者8名と3階に住んでいた前院長夫妻の計10名が死亡しました。また、入院患者3名と医院関係者2名が負傷し、3名が自力で避難しました。

火災による被害状況

死亡した10名はいずれも70～80歳代で、多くが一酸化炭素中毒が原因とみられています。特に2階の入院患者は、ほとんどが病室のベッド上で心肺停止状態で発見されました。病院の建物は鉄筋コンクリート造りでしたが、防火管理者が選任されていなかったことや、スプリンクラー設備の設置義務がない小規模な建物であったことが、被害を拡大させた要因の一つとして考えられます。

病院の構造上の問題点

火災後の調査により、病院の構造上の問題点が明らかになりました。まず、火元となった1階の階段近くにあった防火扉は、1974年の建築基準法改正前に設置された旧式のもので、約3年前の増築の際に新式に交換する義務があったにもかかわらず、放置されていたことが判明しました。さらに、4階の防火扉は常時閉鎖されているべきでしたが、取っ手と手すりがロープで結ばれ、開放された状態になっていました。これらの問題は、火災の拡大を招き、避難を困難にしたと考えられます。

警察の捜査と不起訴処分

福岡県警察は、火災の原因究明のため、治療機器の電気系統の異常などを中心に捜査を行いました。業務上過失致死傷容疑での立件も視野に入れていましたが、福岡地方検察庁は証拠不十分として院長を不起訴処分としました。この処分に対し、地域住民から院長への刑事罰を科さないよう求める約16万人分の嘆願署名が提出されました。

火災後の対応

この火災を重く見た総務省消防庁は、全国の医療機関に対し、火災対策の徹底を求めました。埼玉県では、県内全自治体の病院・医療施設で緊急点検を実施し、建築基準法違反が発覚した施設に対して是正指導が行われました。また、国土交通省は、防火扉の定期点検が各自治体の裁量に任されていた点を改め、建築基準法を改正し、防火扉の定期点検義務化を法令で定める方針を打ち出しました。

まとめ

福岡市整形外科医院火災は、防火設備の不備や管理体制の甘さが、いかに甚大な被害をもたらすかを如実に示した事例です。この火災を教訓に、医療機関だけでなく、全ての建物において、日頃からの防災対策の徹底が求められています。また、法改正によって防火扉の定期点検が義務化されたことは、今後の火災被害を減らす上で重要な一歩となるでしょう。

この火災は、私たちに防災意識の重要性を再認識させ、より安全な社会を築くための教訓として、決して忘れてはならない出来事です。

参考資料:
* 福岡市整形外科医院火災 - Wikipedia

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