福永達夫

福永達夫：冷静沈着なレース運びで魅せた「マムシ」

福永達夫は、1948年3月9日生まれ、山口県出身の元ボートレーサーです。そのレーススタイルは、冷静かつ執拗で、対戦相手に絡みつくようなしぶとさから「マムシ」の異名を取りました。特に、左隣のコースからの捲りに乗じたマーク差しは彼の代名詞とも言えるでしょう。

卓越したレースセンスと勝負強さ

1988年の全日本選手権競走（多摩川）では、今村豊選手のダービー連覇という偉業の陰で、福永選手が2着に入り、山口勢でのワンツーフィニッシュを達成。この時、場外発売の下関では、売上よりも払戻金が上回るという珍現象が発生し、話題となりました。これは、場間場外発売が始まったばかりの頃の出来事でした。

1989年の賞金王決定戦競走では、野中和夫選手が1マークで内側の2艇を捲り、優位にレースを進めると誰もが野中選手の連覇を確信しました。しかし、2マーク手前で今村選手が渾身のツケマイで野中選手を捉え、その内側から福永選手が4コースから差して先頭に躍り出ました。福永選手はそのまま独走し、10回目の優出にして、41歳で初のSGタイトルを獲得しました。2連単は30通り中28番人気という大穴で決着し、福永選手は賞金3300万円を手に入れ、平成最初の賞金王に輝きました。この時、後輩の今村選手は嬉しさのあまり大粒の涙を流したそうです。

1994年の笹川賞競走（戸田）では、準優勝戦で野中選手のすぐ外をマークして2着で優出。続く優勝戦では、インコースを取りに来た野中選手の隙をついてインを奪取、01のタッチスタートから逃げ切り、SG2勝目を挙げました。当時、40代から50代のベテラン選手が自らスタート練習に励むことは非常に珍しいことでしたが、福永選手は努力を怠らず、その実力をさらに高めていたのです。

温厚な人柄と引退後の活躍

普段の福永選手は、小柄で温厚な人柄で、ピットではいつも笑顔を絶やさず、怒った表情を見せることはほとんどなかったそうです。その人柄から、多くの選手に慕われていました。

1998年11月3日の丸亀一般戦で最後の優勝を飾り、2004年5月17日の唐津一般戦が最後の優出となりました。2005年に野中選手が日本モーターボート競走会会長に就任すると、福永選手も理事長に就任。そのため、戸田で開催されるGI「競艇名人戦競走」は二人とも辞退することになりました。福永選手の最後の勝利は2005年1月23日の平和島一般戦で、通算1919勝目を挙げています。そして、2005年2月22日の尼崎一般戦が最後の出走となりました。

2009年からは野中選手の跡を継ぎ、日本モーターボート競走会会長に就任。2011年まで務めた後、2012年7月7日に現役を引退しました。同年には、その功績が認められボートレース殿堂入りを果たしました。

獲得タイトル一覧

福永選手は数々のタイトルを獲得しています。その中でも、特に重要なのは以下のSGレースです。

1989年 - 第4回賞金王決定戦競走（住之江）
1994年 - 第21回笹川賞競走（戸田）

その他にも、以下の記念レースで優勝しています。

1974年 - 徳山開設21周年記念競走
1978年 - 中国地区選手権競走（下関）
1979年 - 大村開設27周年記念競走
1981年 - 中国地区選手権競走（徳山）
1982年 - 若松開設30周年記念競走
1984年 - 多摩川開設30周年記念競走
1986年 - 福岡開設33周年記念競走
1987年 - 下関開設33周年記念競走、江戸川開設32周年記念競走
1989年 - 宮島開設35周年記念競走
1990年 - モーターボート大賞（徳山）
* 1992年 - 住之江開設35周年記念競走


福永達夫は、その卓越したレースセンスと勝負強さ、そして温厚な人柄で、多くのファンを魅了しました。引退後もボートレース界の発展に尽力し、その功績は後世に語り継がれていくことでしょう。

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