福沢諭吉 (映画)

映画『福沢諭吉』

1991年に公開された『福沢諭吉』は、彼の生涯を描いた伝記映画です。この作品は、東映の京都撮影所と東京撮影所の共同制作であり、文部省や優秀映画鑑賞会などからの推薦を受けています。映画は福沢の少年時代から、慶應義塾の設立に至るまでを物語の中心に据え、特に彼と奥平外記との葛藤を描き出しています。

概要

映画は1835年、豊前国中津藩の下級武士の家庭に生まれた福沢が、同じ年に生まれた奥平外記と共に蘭学を志し、西洋文明に目覚めていく様子を描写しています。彼らは長崎に留学し、その後大阪の緒方洪庵の適塾に入門、そこで福沢は成長を遂げ、ついには自ら江戸で蘭学塾「一小家塾」を開きます。福沢は横浜で英語に触れ、西洋文化に開眼し、1860年には咸臨丸でアメリカに渡ります。この旅を通じて、彼の人生観や教育理念がさらに深まっていくのです。

キャスト

主役の福沢諭吉を演じるのは柴田恭兵で、奥平外記役の榎木孝明をはじめ、仲村トオル、南野陽子、若村麻由美、哀川翔など、多彩なキャストが揃っています。このキャスティングにより、時代劇としての新たな試みが表現されています。

制作の背景

映画の企画は、福沢の熱心な支持者である雑誌『経済界』の主幹・佐藤正忠によって提案されました。彼は東映の社長・岡田茂と協力し、スポンサーを集めることで制作の道を開きました。しかし、制作費が膨らむ中、岡田社長は実際の製作に関与していました。また、澤井信一郎が監督として抜擢され、彼の映画作法が新たな形で表れました。

脚本と制作過程

脚本は笠原和夫が担当し、彼は福沢の人生を描くにあたって、さまざまな資料を集めました。しかし、脚本の進行中に監督との意見の相違が生じ、修正を重ねる必要がありました。特に、福沢の青春時代を描くために、奥平外記というキャラクターが重要な要素となりました。このように、多くの意見を取り入れながら、脚本は何度も更新されました。

撮影と演出

撮影は1991年の2月から4月まで行われ、バブル景気の中で多くの資金が投入されました。主なロケ地は慶應義塾の大覚寺や長岡京市の光明寺などで、セットが組まれて撮影されました。また、特に印象的なシーンとして、福沢と奥平の友情が試される長回しの場面が挙げられ、澤井の演出と仙元誠三のカメラワークが評価されています。

作品の評価と興行成績

興行成績は11億円を超え、日本映画の中で7位となりました。また、映画の内容に関して多くの評論家が様々な意見を寄せており、福沢の人物像が時代背景の中でどれだけ浮かび上がるかという点が強調されています。特に、彼が教壇に立ち続ける姿勢がドラマのポイントとして描かれ、観客に強い印象を与えました。この映画は、福沢諭吉という歴史的人物をフィーチャーしたことで、一つの意義を持つ作品となりました。

結論

『福沢諭吉』は、福沢が歴史の中でどのような位置を占めていたのか、その背景を知るための映画として重要です。また、時代劇の新たな可能性を示したとも言える作品で、今後の日本映画における時代劇のあり方に影響を与えるかもしれません。

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