秀ノ山雷五郎

秀ノ山 雷五郎

秀ノ山雷五郎（ひでのやま らいごろう）は、1808年に陸奥国本吉郡（現在の宮城県気仙沼市）で生まれた大相撲の力士です。本名は橋本辰五郎（はしもと たつごろう）で、彼は第9代横綱としてその名を馳せました。自己の力士としての道を歩む背景には、元力士との出会いや家族の影響がありました。

幼少期と相撲の道への決意

彼は海運業と農業を営む家庭の五男として育ち、幼少期から土地相撲の大関である兄の影響を受けつつ、相撲に興味を持つようになりました。兄の活躍を目にすることで、自身も力士を目指す決意を固めます。彼は、家の裏に生えていた榎の木を相手に日々練習し、榎を枯らしてしまったという逸話が残されています。

しかし、榎を枯らしてしまったことで稽古場所を失い、迫り来る現実に彼は無断で家を出て、仙台の兄を訪ねるも、力士になりたいという願いに猛反対されます。最終的に彼は一人で江戸へ旅立ち、いくつかの相撲部屋を訪間しましたが、身長の低さから最初は受け入れてもらえませんでした。

努力と成長

江戸では、同郷の力士荒熊に拾われましたが、彼の扱いには失望し、仙台に戻りました。再度魚問屋「境屋」で奉公する傍ら、相撲の練習を続けていくうちに力量を高め、再び江戸に戻る決心をします。秀ノ山部屋に入門した後、初めは雑用ばかりで本格的な稽古はできませんでしたが、彼は得た力と努力を活かして「北山辰五郎」という四股名で文政11年（1828年）に初土俵を踏みます。

その後、江戸時代の様々な力士たちと共に成長を続け、雲州藩の力士となった後は「天津風 雲右衛門」と改名し、他の新入幕者と共に活躍します。持ち前の闘志で次第にその名を知られるようになり、転向後は盛岡の南部藩の抱え力士に転向。天保12年（1841年）の1月場所で大関に昇進し、「岩見潟 丈右衛門」から「秀ノ山 辰五郎」と名を改めます。

横綱への道

弘化4年（1847年）には横綱免許を授与され、その栄光は入門から19年をかけて実現されました。しかし、横綱としての道のりは平坦ではなく、引退後は年寄として活動しつつ、弟子の育成にも尽力しました。しかし、彼の行動の中で贔屓の弟子を優先することが批判され、「嘉永事件」と呼ばれる大騒動を引き起こしました。

相撲界におけるこの事件は、多くの力士によるストライキに繋がり、当初は非常に危険な状況にまで発展しました。しかし、秀ノ山の謝罪により収束を見ました。実際、この事件は彼が相撲界での地位を築く上での一つの試練となりました。

晩年と死去

文久2年5月19日（1862年6月16日）に彼は54歳で逝去します。秀ノ山の墓は東京都江東区の普門院と、一関市の願成寺にあり、今日では多くの人々に敬われる存在です。特に、2011年の東日本大震災で故郷の銅像が奇跡的に無事であったというエピソードは、彼の遺産として語り継がれています。

主な成績

秀ノ山の通算幕内成績は112勝21敗33分2預96休、勝率は.762です。また、優勝相当勝利は6回を記録しています。彼の成績は、江戸相撲の歴史の中で数少ない輝かしい記録となっています。今もなお、相撲界における先人としての存在感と功績は尊敬されています。

もう一度検索