私権剥奪

イギリスにおける私権剥奪：制度と歴史

イギリスの歴史において、私権剥奪は、反逆罪や重罪で有罪判決を受けた者、あるいは議会で私権剥奪法が可決された者から、市民権、財産、さらには子孫の相続権までも剥奪する強力な制度でした。この制度は、裁判での有罪判決だけでなく、議会による立法でも実行され、その過程において、しばしば政治的な意図が介在していたことが指摘されています。

私権剥奪の適用は、重罪や反逆罪の有罪判決、陪審員の虚偽の評決、そして議会による私権剥奪法の可決といった複数の経路によって行われました。特に、議会による私権剥奪法は、証拠不十分な政敵を排除する手段として利用されることが多く、絶対王政時代にはその傾向が顕著でした。

1459年、第3代ヨーク公爵リチャード・プランタジネットとその支持者への適用を皮切りに、テューダー朝やステュアート朝においてこの制度は頻繁に用いられました。著名な犠牲者には、初代エセックス伯爵トマス・クロムウェル、初代ストラフォード伯爵トマス・ウェントワース、ウィリアム・ロードなどが含まれます。彼らは、政治的反対勢力として、通常の裁判手続きを経ることなく、私権剥奪という形で処刑されたのです。

しかし、17世紀の終わり頃には、私権剥奪による処刑への批判が高まり始めました。私権剥奪による処刑の最後の事例は、1697年にウィリアム3世暗殺未遂事件に関与したジャコバイトのジョン・フェニックに対するものでした。その後、私権剥奪自体は存続しましたが、処刑への適用は廃止されました。議会による私権剥奪法可決の最後の事例は、1798年にアイルランド反乱運動の指導者エドワード・フィッツジェラルド卿に対して行われたものです。

私権剥奪制度は、1870年の没収法により正式に廃止されました。これは、長年にわたる批判と、制度の濫用に対する懸念の高まりを受けた結果と言えるでしょう。

一方、イギリスからの独立を果たしたアメリカ合衆国では、この制度の悪用を避けるため、憲法において連邦議会と各州に対して、私権剥奪法の制定を明確に禁じています。これは、アメリカ合衆国建国の歴史において、私権剥奪がいかに重大な問題であったかを示すものです。

イギリスにおける私権剥奪制度は、その歴史を通して、司法と立法の権力の行使、そして政治的権力闘争の手段として利用されてきました。その過程で数々の犠牲者を生み出し、人権や法の支配に対する深刻な脅威となりました。私権剥奪制度の廃止と、アメリカ合衆国憲法におけるその禁止は、近代民主主義における基本的人権の尊重と法の支配の確立にとって重要な一歩であったと言えるでしょう。この歴史を学ぶことは、権力の濫用を防止し、民主主義の理念を守り続けるために不可欠です。

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