私的演奏協会

私的演奏協会

私的演奏協会（してきえんそうきょうかい、独: Verein für musikalische Privataufführungen）は、作曲家アルノルト・シェーンベルクによって1918年秋にウィーンで設立されたユニークな音楽団体です。この協会の設立は、純粋に同時代の新しい音楽に深い関心を持つ人々のために、徹底したリハーサルに基づいた質の高い演奏機会を提供することを目的としていました。

ウィーンでの協会は、1919年2月から1921年12月にかけて活動しました。この約3年間にわたる活動期間中、合計117回のコンサートが開催され、延べ154作品が上演されました。しかし、オーストリア共和国の深刻なインフレーションにより、残念ながら協会の活動は停止を余儀なくされました。

協会のコンサートは、可能な限り週に一度の頻度で催され、そのプログラムは例外なく完全に現代音楽で構成されていました。取り上げられる作品の範囲は非常に広く、シェーンベルクとその周辺の作曲家によるものだけにとどまりませんでした。ただし、設立後の最初の2年間は、シェーンベルク自身の作品はプログラムに含まれませんでした。代わりに、シェーンベルクが特に高く評価していたクロード・ドビュッシーやマックス・レーガーのほか、モーリス・ラヴェル、イーゴリ・ストラヴィンスキー、ベーラ・バルトーク、アントン・ヴェーベルン、アルバン・ベルクといった同時代の重要な作曲家たちの作品が積極的に演奏されました。また、当時のチェコ音楽も紹介されました。

大規模なオーケストラ作品や交響曲については、現実的な考慮から室内楽編成への編曲が施されて演奏されました。近年、録音が増えつつあるアントン・ブルックナーやグスタフ・マーラーの作品を、シェーンベルクの弟子たちが編曲したものは、まさにこの協会のために特別に作成されたものです。

演奏を担う音楽家は、若手の中から最も才能のある人材が選抜されました。作品のリハーサルは、シェーンベルク自身か、彼が任命した「舞台監督（Vortragsmeister）」の指導のもと、非常に丹念に行われました。協会の最優先課題は、演奏する作品を明晰かつ聴衆にとって分かりやすく提示することでした。そのため、複雑な作品であっても、一度だけでなく繰り返し演奏されることがありました。時には、公開リハーサルに会員である聴衆が立ち会うことも許可されていました。

私的演奏協会では、演奏会への出席は会員のみに限定されていました。これは、好奇心本位のウィーンの一般聴衆を排除し、現代音楽に対する揶揄や嘲笑といった反応を防ぐためでした。さらに、音楽評論家も入場を制限し、批判的な評論家が出版物を通じて協会や作品を攻撃する機会をなくすことを目的としていました。この方針を示すため、演奏会場の入り口には「評論家は出入り無用（Kritikern ist der Eintritt verboten）」という掲示が掲げられていました。また、演奏中に作品を客観的に鑑賞できる環境を保つため、聴衆にはブーイングはもちろん、拍手や歓声さえも一切禁止されていました。

協会の活動期間中、特筆すべき演奏会として、1921年5月27日の第3回演奏会が挙げられます。これは、財政難に陥っていた協会を救済する目的で企画されたもので、ヨハン・シュトラウス2世の有名なワルツが、ピアノ、ハーモニウム、弦楽四重奏による室内楽編成に編曲されて演奏されました。この編曲は、シェーンベルクが『南国のバラ』、ベルクが『酒、女、歌』、ウェーベルンが『宝のワルツ』をそれぞれ担当しました。

ウィーンでの活動停止後、アレクサンダー・ツェムリンスキーによってプラハに後継となる団体が設立されました。このプラハの協会は1922年4月から1924年5月まで活動し、シェーンベルクが名誉総裁、ハインリヒ・ヤロヴェッツとヴィクトル・ウルマンが舞台監督を務めました。最盛期には400名を超える会員数を誇り、ウィーンの協会よりも会員に恵まれていました。また、ウィーンの協会とは異なり、プラハの会員の大部分はアマチュア音楽家であり、1974年に出版された研究書によれば、その構成は「地方公務員、文筆業、医師、法律家、大学教授と学校教師、ビジネスマン、俳優、画家、学生」といった多様な層であったことが知られています。

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