秋吉博之

秋吉博之（あきよし ひろゆき）氏は、1954年に福岡県久留米市で生まれ、日本の教育学界において、特に理科教育学および子ども環境学の分野で顕著な業績を上げている研究者です。現在は和歌山信愛大学教育学部の教授として教鞭をとっています。

略歴

秋吉氏は、1980年に鹿児島大学農学部農芸化学科を卒業後、一旦食品会社で品質管理の仕事に就きました。その後、教育への道を志し、兵庫県内の公立中学校（神戸市立葺合中学校）にて教諭を務め、教育現場での実践経験を積みました。さらに、兵庫教育大学附属中学校では文部教官教諭として勤務するなど、様々な教育機関での教職を歴任しました。

教育者としてのキャリアと並行して研究活動も深め、2004年には神戸大学大学院国際協力研究科博士後期課程を修了し、博士（学術）の学位を取得しています。この学究的な背景は、その後の国際協力活動にも活かされています。

秋吉氏の国際的な活動としては、国際協力機構（JICA）のプロジェクトへの参加が特筆されます。ケニアにおける中等理数科教育強化プロジェクトでは、生物教育を専門とする技術協力専門家として派遣され、現地の理科教育の質の向上に貢献しました。この経験は、後に単著としてまとめられるなど、氏の研究活動にも深く影響を与えています。

帰国後は大学教員としてのキャリアを本格的にスタートさせました。就実大学教育学部の教授を務めた後、同大学院に新設された人文科学研究科初等教育学専攻でも教授として、新しい研究科の立ち上げと教育に尽力しました。さらに、大阪教育大学教育学部実践学校教育講座理科教育学研究室の教授を経て、同大学院に新設された連合教職実践研究科でも教授を務めるなど、新設の学部や研究科に携わる機会が多くありました。これらの経験を通じて、新しい教育システムの構築や教員養成プログラムの開発に重要な役割を果たしています。そして、2019年4月からは、新たに設立された和歌山信愛大学教育学部の教授に就任し、現在に至ります。

研究分野と業績

秋吉氏の専門は、理科教育学と子ども環境学です。長年の教育現場での経験や国際協力での実践に基づき、理科教育のあり方、特に子どもたちが主体的に学び、環境について深く理解するための教育方法の研究に力を入れています。大学での教育活動においては、未来の理科教員育成に情熱を注いでいます。

その研究成果は、多数の著書や編著、共著として結実しています。単著としては、ケニアでの国際協力の経験をまとめた『理科教員研修の指導と評価─ケニア理数科教育強化計画での実施─』があります。また、『理科教育法』シリーズ（山田卓三氏らと共編著）は版を重ねており、理科教育の理論と実践を結びつける重要な書籍となっています。さらに、『実験で実践する魅力ある理科教育』（川村康文氏らと共編著）シリーズは、理科の授業における実験指導の重要性を説き、具体的な実践方法を示すものです。これらの編著を通じて、多くの理科教育関係者に影響を与えています。

共著も非常に多く、そのテーマは多岐にわたります。『生物による環境調査事典』や『新 生物による環境調査事典』といった環境教育関連の書籍から、『プロ教師をめざす新理科教育早わかり事典』、『小学校教員採用試験 理科問題集』、『すぐに役立つ研究授業のための学習指導案のつくり方』など、教員養成や現職教員の授業力向上に資する実践的な内容のものまで幅広く手掛けています。これらの著作は、理科教育の理論研究だけでなく、教育現場で実際に役立つ知識や技術の普及にも貢献していることを示しています。

秋吉博之氏は、理科教育の実践、理論、国際協力、そして教員養成という多角的な視点から、日本の理科教育の発展に尽力しており、その業績は教育界において高く評価されています。和歌山信愛大学での今後の教育研究活動にも期待が寄せられています。

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