秋山里奈

秋山里奈（あきやま りな）は、1987年11月26日に神奈川県伊勢原市で生まれた日本の女子競泳選手です。生まれつき全盲という視覚障害を持ちながらも、国際的な舞台で活躍し、アテネパラリンピックでは銀メダル、ロンドンパラリンピックでは金メダルを獲得するという輝かしい実績を残しました。

競泳との出会いとパラリンピックへの歩み

生後間もなく網膜剥離と診断され、全盲となった秋山氏は、水に親しむことが好きだったことから、母親の勧めで3歳の時にスイミングスクールに通い始めました。地元地域の盲学校で学んでいた小学校5年生の頃、同じく全盲の競泳選手である河合純一氏の著書を録音したものを聴いたことが大きな転機となります。この経験を通じて、彼女はパラリンピック出場という目標を明確に意識するようになりました。

中学校および高校は、茨城県にある筑波大学附属視覚特別支援学校で学び、学生寮での共同生活を送りました。この学校に在学中の2004年、アテネで開催されたパラリンピックに出場。女子100メートル背泳ぎS11クラスの予選を5位で通過し、決勝では自己記録を2秒以上も縮める力泳を見せました。中国の董啓明選手が持つ世界記録にはわずか0.3秒届きませんでしたが、見事に銀メダルを獲得し、その名を国内外に知らしめました。

学業との両立と新たな挑戦

当初、英語の教員を目指していた秋山氏でしたが、予備校講師との出会いをきっかけに、日本国憲法の平和主義に強い関心を抱くようになります。この新たな興味から、明治大学法学部への進学を決意しました。大学受験のための準備期間中は競技から一時的に離れましたが、合格が決まった後に再び水泳を再開。2007年のジャパンパラリンピック水泳競技大会では、当時の世界記録を1秒以上更新する記録を樹立して優勝を果たしました。

しかし、次の北京パラリンピックでは、彼女の障害区分における得意種目であった背泳ぎが廃止されるという事態に直面します。新たな挑戦として自由形に取り組み、北京パラリンピックへの出場権を獲得。同大会では50メートル自由形S11で8位に入賞しましたが、100メートル自由形S11では予選通過は叶いませんでした。

競技生活の集大成となったのは、2012年のロンドンパラリンピックです。この大会で金メダルを見事に獲得し、長年の努力が報われました。ロンドンでの金メダル取得を区切りとして、秋山氏は現役からの引退を決断。現在は都内の製薬会社に勤務し、競技者としてのキャリアを終えています。

人物像と引退後の活動

スイマーとしての顔の他に、秋山氏の人物像を表すエピソードは数多くあります。

意外にも犬が苦手だと語っていますが、実際にはチワワとミニチュアダックスフントの2匹を飼っており、以前は中型犬も飼っていた経験があります。
姉がアーティスティックスイミングをしていた際に訪れた教室で、ソウルオリンピック銅メダリストの小谷実可子氏から実際にメダルを借りて首にかけてもらった、という貴重な体験も語っています。
飲料の『ごっくん馬路村』は、先輩からの土産でその味を知って以来、通販で継続して購入するほどのお気に入りです。同じ馬路村のゆずぽん酢も愛用しています。卒業旅行で四国を訪れた際には、この馬路村に行ってみたいという思いがありましたが、場所が遠く断念したというエピソードもあります。
将来の使用に向けて、次に購入する白杖としては、国産の電子白杖を検討しています。
競技生活中のストイックな一面を示すエピソードとしては、2011年8月のジャパンパラで世界新記録が出せなかった際、『自己ベストを更新するまでお酒は飲まない』と決め、約1年間禁酒を実践。この禁酒期間を経て、ロンドンでの金メダル獲得に繋がったことは、彼女の強い意志を物語っています。
現役引退後は一度もプールで泳いでいないと明かしており、2020年に開催予定だった東京パラリンピックでの現役復帰の可能性も否定しています。さらに、東京でのオリンピック・パラリンピック招致に対しても、当初は反対の立場を取っていたといいます。

学業面では、大学2年次に履修した刑法各論を機に刑法への関心を深めました。明治大学を3年次で早期卒業し、大学院法学研究科に進学。中空教授のもとで刑法の財産犯について研究するなど、競技生活と並行して知的な探求にも力を注いでいました。視覚情報に頼らない世界での生活においても、新たな技術への関心は高く、2016年のテレビ番組では、音を使って周囲の状況を把握する『反響定位』について、フアン・ルイス氏から直接指導を受け、舌打ち音の反射による位置感知や、異なる材質の聞き分けなどの練習を行った経験もあります。

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