秋田県立美術館 平野政吉コレクション

秋田県立美術館 平野政吉コレクション：秋田の芸術と歴史を彩る至宝

秋田県立美術館 平野政吉コレクションは、秋田県秋田市エリアなかいちに位置する、近代・現代美術を主とした美術館です。同美術館の最大の特徴は、秋田出身の資産家であり、熱心な美術収集家でもあった平野政吉氏（1895-1989）の膨大なコレクションを核に構成されている点にあります。特に、平野氏と親交の深かった画家、藤田嗣治（レオナール・フジタ）の作品群は、美術館の重要な柱をなしています。

旧美術館から新美術館へ：移転と変遷

美術館の前身は、1967年5月5日に千秋公園内に開館した旧秋田県立美術館（平野政吉美術館）です。この旧美術館は、日本神殿を思わせる独特の建築様式で知られており、特に藤田嗣治の大作『秋田の行事』の展示に配慮した、自然光を取り込む礼拝堂のような空間が特徴でした。

しかし、老朽化や展示スペースの狭隘化、さらなるコレクションの充実を背景に、2013年9月28日、エリアなかいちに移転、再オープンしました。新美術館は、世界的建築家である安藤忠雄氏の設計によるもので、三角形を基調とした斬新なデザインが目を引きます。2階には千秋公園を望む水庭も設けられ、洗練された空間となっています。移転に際しては、旧美術館建物の歴史的価値や作品との一体性などを考慮した議論が、県議会や市民の間で行われたことも特筆すべき点です。最終的に、旧美術館は改修を経て2021年3月に「秋田市文化創造館」として新たな役割を担うことになりました。

平野政吉コレクション：藤田嗣治作品を中心に

平野政吉コレクションは、601点にのぼる作品群から構成されており、その多くは平野氏個人の収集によるものです。中でも、藤田嗣治の作品は、105点（素描を含む）と充実しており、1930年代の作品が中心です。これらは、藤田嗣治作品のコレクションとしては世界屈指の規模と質を誇ると評価されています。

コレクションには、藤田嗣治の代表作である大壁画『秋田の行事』（1937年）も含まれています。縦3.65m、横20.5mという圧倒的なスケールで描かれたこの作品は、秋田の祭りや風習を生き生きと表現した力作です。平野氏の「世界のフジタに世界一の大壁画を」という強い要望によって制作されたもので、美術館のシンボル的存在となっています。

さらに、コレクションは藤田嗣治作品にとどまりません。藤田氏自身の所蔵品であった土偶や中南米の資料なども含まれ、多様な視点から芸術と文化を探求できるようになっています。他にも、スペイン中世の宗教画、ゴヤの版画、初期の日本洋風画、中国絵画、写真など、幅広いジャンルの作品が収蔵されています。

美術館の構成とアクセス

新美術館は、1階にエントランスホールと県民ギャラリー、2階に大壁画ギャラリーとミュージアムラウンジ、3階に常設ギャラリーが配置されています。エントランスホールの吹き抜け空間や、2階の水庭など、建築デザインにも注目が集まります。

アクセスは、JR秋田駅西口から徒歩約10分、または秋田中央交通のバスを利用できます。秋田市中心部に位置し、観光の拠点としても最適です。

まとめ

秋田県立美術館 平野政吉コレクションは、貴重な美術コレクションと、近代建築の魅力が融合した、秋田を代表する美術館です。藤田嗣治の代表作『秋田の行事』をはじめとする充実した展示、そして歴史的背景を理解することで、より深く芸術鑑賞を楽しめるでしょう。秋田を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

もう一度検索