秘宝館

秘宝館とは

秘宝館は、古今東西の性や性風俗にまつわる様々な文物や資料を展示する私設博物館です。元来は珍しい古美術品や歴史的な宝物を収蔵する施設を指しましたが、現代では「○○秘宝館」といった名称は、性的テーマを扱った展示を行う施設をやや婉曲的に表現する言葉として定着しています。

日本における歴史と隆盛

日本で最初の秘宝館とされるのは、1969年に徳島県に開館した「男女神社秘宝館」です。その後、1972年には京都科学標本が協力したという三重県の「元祖国際秘宝館」が開業。高度経済成長期の団体旅行ブームと相まって、1970年代後半から1980年代にかけて、温泉街などの大規模な観光地を中心に全国で隆盛を極めました。この時期には、従来の男性客だけでなく女性客も視野に入れたり、東宝などの専門業者が手掛けた映像や舞台美術のようなアミューズメント性の高い展示を取り入れた施設も多く登場しました。

衰退と再評価

しかし、1990年代に入ると団体旅行客の減少や社会の価値観の変化に伴い、その特殊な展示内容が敬遠されるようになり、次第に入館者が減少。多くの秘宝館が閉館に追い込まれました。一方で、1990年代中頃からは写真家の都築響一氏らによって各地の秘宝館がメディアで紹介されるようになり、単なる性風俗施設としてではなく、「怖いもの見たさ」や「アウトサイダーアート」のような過剰な表現物として、秘宝館を見直す動きも生まれました。しかし、その性質上、展示内容が問題視されるケースもあり、2006年には東北サファリパークに併設されていた施設が摘発される事例も発生しています。

世界のセックスミュージアム

性に関する物品を展示する私設博物館は、1960年代の性の解放運動などを背景に、ヨーロッパを中心に世界各国に存在します。「セックスミュージアム」や「エロティックミュージアム」などと呼ばれ、アムステルダムの「飾り窓」地区のような売春地域やポルノショップの集まる場所に設置されることが多い傾向があります。21世紀以降はアジアなどにも広がりを見せています。

日本の秘宝館のタイプ

日本の秘宝館は、その展示内容や運営形態によって大きく二つのタイプに分けられます。

1. エンターテイメント系（レジャー系）秘宝館: 蝋人形や大掛かりな機械仕掛けを駆使し、性的な妄想世界や物語を再現することに主眼を置いたタイプです。設置や維持に多額の費用がかかるため、企業体が営利目的で運営していることが多く、採算が合わないと閉館しやすい傾向があります。全国で複数の施設を展開していた「元祖国際秘宝館」系列や、現在も営業を続ける静岡県の「熱海秘宝館」などが代表例です。
2. コレクション系秘宝館: 性風俗に関連する物品や資料を収集・展示することに主眼を置いたタイプです。地元の好事家などが個人的に収集したものを展示しているケースが多く、個人で運営されていることが多いです。

展示物の例と利用上の注意

秘宝館の展示物は多岐にわたります。動物の生殖器の標本、性神石仏のレプリカ、生殖器を模した彫刻や民芸品、性行為のシーンを描いた絵画や人形、四十八手などのポルノ映像の上映コーナー、性病や妊娠に関する解説パネルなどが含まれます。施設の性質上、ほとんどの施設で未成年者の入館は禁止されており、展示物の写真撮影も原則として認められていません。

多くの施設が閉館した現在でも、一部の秘宝館は営業を続けており、また閉館した施設の展示品を受け継いで一部を展示するような新たな形の試み（例：豊島区のバー「ニュー秘宝館」）も見られます。秘宝館は、日本の大衆文化や性に対する価値観の変遷を映し出す、特異な文化装置と言えるでしょう。

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