秘書省

中国古代の宮廷図書館：秘書省

秘書省は、中国古代における重要な官庁の一つであり、宮廷図書館としての役割を担っていました。その歴史は古く、晋代に設置された秘書寺を起源とし、後に秘書省と改称されました。唐代には蓬山、麟台という別名でも知られ、その権威と重要性を示しています。明代以降は、翰林院に統合されるまで、中国の歴史と文化を支える重要な機関として存続しました。

秘書省の主要な業務は、経籍（古典や歴史書などの書籍）の管理でした。これは単なる保管だけでなく、書籍の修復、整理、そして新たな写本の作成なども含む、広範な業務に及びました。宮中における図書管理の中枢として、重要な役割を担っていたと言えるでしょう。 皇帝や朝廷の要人が必要な書物をいつでも閲覧できるよう、体系的な管理体制が構築されていたと考えられます。

組織運営においては、秘書監を筆頭に、少監、丞、郎といった様々な官職が設けられていました。秘書監は宮中図書館の長に相当する要職であり、従三品という高い位階にありました。少監は副長官的な役割を担い、蘭台侍郎という別名でも呼ばれていました。これらの官職以外にも、校書郎、正字、主事、令史など、多くの職員が配置され、それぞれが専門的な知識や技能を活かして業務にあたっていました。

秘書省の職員数は、実に88名にも及びました。その内訳は、秘書監1名、秘書少監2名、秘書丞1名、秘書郎4名、校書郎8名、正字4名、主事1名、令史4名、書令史9名、典書4名、楷書10名、亭長6名、掌固8名、熟紙匠10名、装潢匠10名、筆匠6名と、多様な職種から構成されていました。これらの職種は、書籍の管理、修復、写本作成、そして図書館運営の維持に必要不可欠な役割を担っていました。熟紙匠、装潢匠、筆匠といった職種が存在したことは、書籍の製作にも深く関わっていたことを示しています。

このように、秘書省は単なる図書館ではなく、経籍の収集、整理、保存、そして新たな写本の作成までを一貫して行う、高度な専門性を有する組織であったことがわかります。その活動は、中国の歴史と文化の継承に大きく貢献しました。そして、明代以降翰林院に統合された後も、その役割は翰林院に引き継がれ、中国の文化発展に貢献し続けました。秘書省の歴史は、中国の知識文化の保存と発展の歴史そのものであると言えるでしょう。

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