秦藤樹

秦藤樹（はたふじき）

秦藤樹は、1908年4月13日に長野県で生を受け、2004年3月25日にこの世を去った日本の著名な医師および医学者である。彼の専門分野は微生物科学であり、抗生物質の研究において多くの業績を残した。特に彼は、北里大学の前学長として知られており、がん化学療法の権威としても名を馳せた。

経歴

秦藤樹は、出身地である長野県東筑摩郡会田村（現・松本市）で育った。1934年には慶應義塾大学医学部を卒業し、内科に入局した。その後、軍医として短期間勤務の後、北里研究所での研究を始めた。1936年には北里研究所に研究員として採用され、当時の生化学部門で藤田秋治部長の下で研究を行った。

彼は、1939年に医学博士の学位を取得し、その論文のテーマは「組織内Cytoclirom C定量法の研究」であった。多くの医療機関で軍務に従事したのち、1948年には北里研究所の所長に就任。1954年から1955年にはアメリカのラトガース大学微生物研究所で留学をし、さらに1961年には同研究所の所長に就任した。

秦の研究業績の中でも特に注目すべきは、1953年に発見した抗生物質ロイコマイシン、1956年に発見した抗生物質マイトマイシンである。これにより、彼は日本における抗生物質研究の先駆者の一人となり、がん医療の発展に貢献した。

さらに、1967年から1970年には日本細菌学会の理事長を務め、1972年には北里大学の学長に就任。彼の功績は学術界だけに留まらず、2006年には北里大学内に「秦藤樹博士記念学術奨励賞」が設けられ、後進の育成にも寄与している。

栄典・賞

秦藤樹の業績は、多くの栄典や賞によって評価されている。1964年には紫綬褒章が授与され、1980年には勲二等瑞宝章を受章。また、学術賞としても1957年に浅川賞を、1989年には高松宮妃癌研究基金学術賞、さらに1990年には日本学士院賞を大村智との共同受賞として授与された。

編著・書籍

彼は、数多くの著書や編著も残しており、1952年に出版した『抗生物質学』（三方一沢と共著）は特に有名である。また、1966年には『微生物化学』や『微生物学』（小松信彦との共著）を発表し、1976年には『衛生微生物学』を発表した。さらに、1995年には『秦佐八郎小伝』（秦八千代との共著）も上梓している。

彼の業績は医療・生物科学の発展に大きく寄与することとなり、日本の医学界において重要な位置を占めている。秦藤樹は、ただの学者ではなく、人々の生命を守るための努力をした医師として、今なお多くの人々の記憶に刻まれている。

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