秦逵

秦逵（しん き、生年不詳 - 1392年）は、明朝初期に活躍した官僚です。字は文用といい、寧国府宣城県（現在の安徽省宣城市）を本貫とします。

生涯

1385年（洪武18年）、秦逵は進士の試験に合格し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。都察院に配属され、囚人の管理を担当した際には、その統制能力が高く評価されました。洪武帝は秦逵の才能を認め、工部侍郎に抜擢しました。

当時、明朝では大規模な営繕事業が頻繁に行われており、工部尚書のポストが空席であったため、秦逵が実質的に全ての造営事務を管轄することとなりました。この時期、四方から工匠を徴発する制度について議論が重ねられていました。以前から、3年を1班とし、交代で上京させ、3ヶ月で交代させる「輸班匠」という制度が考案されていましたが、実施には至っていませんでした。秦逵は、工匠の出身地の遠近によって班を分け、工匠の籍を置き、勘合符で照合し、時期が来たら現場に入れるように手配することで、この制度を現実のものとしました。さらに、工匠の家の徭役を免除するなど、制度の円滑な運用を支える措置を講じました。これらの制度は文書化され、法令として公布されました。

1389年（洪武22年）2月、秦逵は工部尚書に昇進しました。1390年（洪武23年）5月には、沈溍と交代し、兵部尚書に転任しましたが、翌6月には再び工部尚書に復帰しました。

洪武帝は、学校を国家の後継者を育成する重要な機関と考えていましたが、当時の学生（士子）の服装が役人（胥吏）と区別がつかない状況を問題視していました。そこで、秦逵に命じ、学生の服装の制式を考案させることにしました。秦逵は、3度にわたる改案を経て、ついに新しい制式を定め、監生には藍衫（あいさん）と組み紐が1着ずつ与えられることになりました。この時定められた明代の学生の服装は、秦逵によって創始されたものとされています。

しかし、1392年（洪武25年）9月、秦逵は自ら命を絶ちました。その理由は明らかになっていません。

人物評価

秦逵は、明朝初期の官僚として、その実務能力と制度設計能力が高く評価されました。特に、工部での業績は目覚ましく、工匠制度の整備や士子の衣冠制定など、後世に大きな影響を与える政策を立案・実行しました。洪武帝からの信頼も厚く、その才能を高く評価されていたことが伺えます。

参考文献

* 『明史』巻138 列伝第26

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