秩父鉄道ヨ10形貨車

秩父鉄道ヨ10形貨車は、1968年から1988年まで秩父鉄道で活躍した事業用貨車、いわゆる車掌車です。その出自と外観から、非常にユニークな存在として知られています。

概要
ヨ10形は、全車がヲキ1形貨車を改造したもので、ヨ11からヨ19までの9両が存在しました。ヲキ1形の台車と台枠を流用しているため、車掌車としては珍しいボギー車であることが最大の特徴です。通常の車掌車は、貨物列車の最後尾に連結されることが多く、操車場での入換作業時のブレーキ操作や、列車の監視を行うためのもので、簡素な構造の二軸車が一般的でした。しかし、ヨ10形は、元となったヲキ1形が鉱石輸送に使用されていたこともあり、頑丈な台車と台枠を備えていました。

特異な外観
車掌室を車体片側に寄せたL字型の外観も、ヨ10形の大きな特徴です。これは、ヲキ1形の台枠幅が狭いことに起因しており、独特のプロポーションを生み出しました。車体は黄色と黒の警戒色で塗装され、遠くからでもその存在を識別することができました。車掌室には、乗務員用の座席やストーブ、手ブレーキなどが備えられており、冬場でも快適に乗務できるよう配慮されていました。

短命な活躍
ヨ10形は、1987年9月の緩急車連結廃止によって、その役割を終えることになりました。これは、貨物列車の運行体制が変更され、車掌車を連結する必要がなくなったためです。翌1988年3月には、全車が廃車となり、その短い生涯を閉じました。

保存の試みと解体
かつては、ヨ15が三峰口駅に併設された秩父鉄道車両公園に静態保存されていました。しかし、老朽化のため解体されてしまいました。ヨ10形は現存しませんが、その特異な外観と出自から、鉄道ファンにとっては忘れられない存在です。その特徴的な姿は、写真や鉄道模型として今もその姿を見ることができます。

主要諸元
全長：7,470 mm
全幅：2,510 mm
全高：3,150 mm
重量：11.2 t
制動機：空気ブレーキ、手用ブレーキ
連結器：柴田式自動連結器

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