車掌車

車掌車とは

車掌車は、貨物列車において、車掌が乗務し業務を行うための専用車両です。貨物積載を目的とせず、もっぱら乗務員の業務スペースとして活用されていました。通常、列車の最後尾に連結され、デッキには手ブレーキが備えられています。車掌車は事業用車両であり、旅客を乗せることはありません。

貨物積載と乗務員スペースを兼ね備えた車両は「緩急車」と呼ばれますが、国鉄の現場では、貨物を積載しない車両も含めて緩急車と呼ぶこともありました。本稿では、日本国内の車掌車に焦点を当てて解説します。

日本における車掌車の歴史

国鉄では1985年まで、一部の例外を除き、すべての貨物列車に車掌車または緩急車が連結されていました。車掌は、運行中の車両検査や事故時の列車防護といった重要な業務を担っていました。1969年の職制改正以降は、貨物列車に乗務する車掌が「列車掛」という職制に分離されました。

その後、機関車の性能向上や車両連結数の減少、デッドマン装置の普及、無線装置の整備が進んだことにより、1985年のダイヤ改正で貨物列車の1人乗務化が実施され、列車掛の乗務は廃止されました。これにより、多くの車掌車や緩急車が用途を失い、廃車となりました。また、列車掛の職制も1986年に廃止され、人員整理の対象となりました。

現在では、残存している車掌車が、主に新製車両の輸送や特大貨物輸送の際に、係員の控車として利用されています。また、廃車となった車掌車の一部は、トロッコ列車への転用や、物置、小屋として再利用されています。

車両の特徴

車掌車は基本的に二軸車で、車内には事務机や長椅子、ダルマストーブ、ストーブ用石炭置き場などが設置されていました。ヨ8000形以降の車両にはトイレも設置されました。床下には、車内灯や尾灯用の車軸発電機や蓄電池が搭載されています。また、後年石油ストーブ搭載に改装された車両も多く、識別のため車体に白帯が表示されています。

一般的な二軸貨車の最高速度は75km/hでしたが、車掌車は貨物を積載しないため、板バネを柔らかくし、最高速度を85km/hに引き上げて、急行貨物列車にも連結されていました。

国鉄およびJRの形式称号では、車掌車は「ヨ」と表記されます。その愛嬌のある姿から「ヨ太郎」の愛称で親しまれていました。

近年における運用例

東海道線と紀勢線を結ぶ貨物列車では、2000年まで車掌車（ヨ8000形）が連結されていました。この運用が廃止された後、定期貨物列車で車掌車が本来の目的で使用されることはなくなりました。

苅田港線では、推進運転時の監視用として、ヨ8000形を改造した車両が2005年まで使用されていました。

東武鉄道では、SL大樹の運行に際し、保安装置の関係から車掌車が連結されています。また、釧網本線のSL冬の湿原号でも緩急車として連結されています。

主な形式

日本国有[[鉄道]]

ヨ1形
ヨ1500形
ヨ2000形
ヨ2500形
ヨ3500形
ヨ5000形
ヨ6000形
ヨ8000形
ヨ9000形

東武鉄道

ヨ101形
ヨ201形

秩父[[鉄道]]

ヨ10形

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