移剌買奴

移剌買奴（いらつ マイヌ、1196年 - 1235年）は、モンゴル帝国に仕えた契丹人の重要な武将である。彼はその父、移剌捏児に従い、モンゴル帝国の征服戦争に早くから参加し、数多くの戦いで名を馳せた。

買奴の物語は、彼が若干の年齢で初めてチンギス・カンと面会したときから始まる。彼が当時の帝王から「汝は年少であるが、父の爵位を継ぐことはできるか？」という質問を受けた際、彼は自分の年齢に関わらず、国法と家の名誉を重んじる姿勢を示した。その彼の言葉を聞いたチンギス・カンは、彼に対する信頼を深め、以後高州等処のダルガチと征行万戸の任を与えた。

1230年、彼は高麗の花涼城攻めに加わり、戦場での彼の指導力が試されることとなる。この戦いでは、監軍の張翼や劉覇都が敵に対して猛烈な攻撃を仕掛けようとした際、買奴は彼らの行動を止め、それが示す通り、彼は冷静な判断力を持っていた。その後の開州での戦いでは、金朝の将軍金沙密を捕らえ、城中の民から貢物を受け取ることを拒んだ。これは、彼の道義心や武士としての誇りを示している。

その後、買奴は龍州・宣州・雲州・泰州を含む14の城を平定するという武勲を挙げ、1233年にはアルチダイに従い東夏国の制圧に貢献した。さらには叛乱を起こした興州の趙祚や楊買驢に対する討伐にも派遣され、彼はアルチダイの指揮下で奮闘し、董蛮を斬る決定的な戦果を上げた。楊買驢を包囲する際には、巧妙な策略を駆使し、劉五児という者を使って城塞攻撃を成功に導いた。こうして城が陥落すると、楊買驢は自らの命を絶つこととなった。

買奴の戦場での活躍は、彼にオゴデイ・カアンから金鞍良馬を与えられる栄誉をもたらした。1235年には高麗に侵攻し、開京を目指したものの、高麗が早々に降伏を申し出たため、彼は一時帰還し西京に駐留。後に再び高麗征討のために出兵しようとするも、病に倒れ40歳でこの世を去った。彼の死後、息子の移剌元臣がその後を継いだ。

移剌買奴は、モンゴル帝国の中で契丹人として重要な役割を果たし、彼の功績は歴史に刻まれている。彼の生涯は、勇敢さや戦術的な才能、武士としての誇りを示すものであり、モンゴルの歴史の中で忘れられない存在となった。彼の物語は、当時の激動の歴史の中で生き抜く力強い人間の姿を描いている。

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