種子島久道

種子島久道（たねがしま ひさみち）

種子島久道は、寛政5年（1793年）に生まれ、文政12年（1829年）に35歳で亡くなった、江戸時代後期の薩摩藩家臣で、第23代種子島氏当主です。幼名は鶴袈裟、初めは輔時、後に久徴と名乗り、最終的に久道と改名しました。官位は蔵人、美濃、伊勢。男子直系子孫としては、種子島本家の最後の当主となりました。

生涯

久道は、寛政9年（1797年）に、わずか4歳で島津斉宣の次女・御隣と結婚します。文化2年（1806年）には鹿児島城で元服し、正式に種子島家の後継者としての道を歩み始めました。

文化15年（1818年）、藩主・島津斉興は、生まれたばかりの男子（後の島津久光）を久道と御隣の間に生まれた娘と結婚させ、婿養子として種子島家の後継者とするよう命じます。この申し出は、久道夫妻がまだ若く、男子誕生も期待できる時期であったため、種子島家臣団からは、家格の違いから反対の声が上がります。しかし、最終的には藩主との関係悪化を恐れた久道の決断により、この養子縁組は受け入れられました。養子となった普之進（後の島津久光）は、斉興の手元で養育され、種子島家は一切関与できませんでした。

しかし、文政8年（1825年）に、島津斉興は突然、普之進の養子縁組を撤回します。この行為は種子島家を大いに侮辱するものであり、久道夫妻は斉興に抗議しました。しかし、その後、普之進に代わる養子は立てられることはなく、病弱だった久道は、文政12年（1829年）に後継者を残すことなく亡くなります。正室・御隣や側室との間にも女子しかいなかったため、種子島家は断絶の危機に陥りました。

しかし、久道の未亡人である御隣（松寿院）や種子島家家老達の必死の嘆願により、「しかるべき養子が決定するまで、松寿院が種子島家の家督代を務める」ことが認められました。これにより、種子島家は家名断絶の危機を免れることができたのです。久道の跡を継ぐ久珍が種子島家に迎えられたのは、久道の死後15年も経ってからのことでした。

家族

父：種子島久照
母：側室（聞法院、新納木工右衛門の姉）
養母：島津久濃の娘（清孝院、父・久照の正室）
異母姉：於邑（花月院、伊勢準之助妻→離婚後、市田義宣妻）
異母姉：佐登（梅光院、宮之原甚五兵衛妻→離婚後、北条時昭妻）
同母弟：時中（種子島次時養子）
同母妹：婦天
正室：御隣（松寿院、9代薩摩藩主・島津斉宣次女）
長女：歌袈裟
次女：巌袈裟
長男：鐵熊
次男：知千代
三女：久美（島津久徴妻）
四女：婦美（鎌田之允妻）
側室：楚女
五女：政袈裟（關山糺妻→離婚後、伊勢雅楽妻）

参考文献

* 『種子島氏家譜』（『鹿児島県史料』家分け8所収）


種子島久道は、藩主の意向に翻弄されながらも、種子島家の存続のために尽力した人物です。彼の死後、種子島家は一時的に危機を迎えますが、未亡人・御隣の活躍によってその危機を乗り越え、命脈を保ちました。久道の生涯は、藩主の権力と、それに対する家臣の苦悩を描いた歴史の一幕と言えるでしょう。

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