種子島氏

種子島氏

種子島氏は、鎌倉時代から種子島を領有した武家であり、江戸時代には薩摩藩の家老を務めた名門です。その歴史は、平氏を称する初代信基に遡ると伝えられていますが、実際には北条氏の被官である肥後氏がルーツであるとする説が有力です。

概要

種子島氏の家譜によれば、平清盛の孫である行盛の遺児が、北条時政の養子となり時信と名乗り、種子島に入ったのが初代信基とされています。信基は時政の伝手により種子島を含む十二島を与えられたとされています。しかし、実際には承久の乱後に、北条朝時の被官であった肥後氏が種子島の地頭代となり、その嫡流が多禰嶋を名字としたと考えられています。5代時基以前の史料は不明確ですが、6代時充の頃から「多禰嶋（種子島）」を称するようになります。

鎌倉幕府滅亡後も、種子島氏は在地領主として島を支配し、1408年には8代清時が守護島津元久から屋久島を与えられました。

戦国時代

戦国時代には、13代恵時が島津家の内紛で貴久側につき、1543年には14代時堯の時代に鉄砲が伝来しました。種子島では砂鉄が豊富だったため、鉄砲の国産化に成功し、その功績から鉄砲は「たねがしま」と呼ばれるようになりました。また、この頃、屋久島をめぐり禰寝氏との間で激しい抗争（禰寝合戦）が繰り広げられました。

16代久時は島津氏に臣従し、それまで独自に行っていた琉球貿易権や屋久杉の伐採販売権も島津氏の手に渡りました。文禄4年（1595年）には太閤検地に伴い薩摩国知覧に移封されましたが、慶長3年（1598年）には薩摩藩の家老に任命され、江戸時代を通して1万石の家格を保持しました。翌年には旧領の種子島に移封されましたが、屋久島は島津氏の直轄地となり、鹿児島への在府を義務づけられました。

江戸時代

江戸時代には、16代久時の娘が島津家家老の伊勢貞豊に嫁ぎ、その娘が島津光久の正室となったことから、以降の島津家当主は種子島氏の血を引くことになりました。

23代久道は島津家の内紛に翻弄され早世し、後継者を欠いた種子島氏は取り潰しの危機に陥りました。これを救ったのは久道の正室である御隣の方で、彼女が養嗣子の要請を行うと共に、種子島氏の実質的な当主として政務を執り行いました。彼女の尽力により、種子島の殖産産業が発展したと言われています。その後、久道死後15年を経て、島津斉宣の12男が養子となり24代久珍を名乗りましたが、これにより鎌倉時代から続いた種子島氏嫡流の男系血統は途絶えました。

明治以降

明治維新後、25代久尚の代に種子島氏は士族となりました。当初は華族となることができませんでしたが、27代守時の度重なる請願により、明治33年（1900年）に男爵に叙せられました。種子島男爵家の邸宅は、28代時望の代には鹿児島県高麗町にありました。

守時は一族の分家から夫人を迎えたため、子である時望と時哲は父方・母方双方から種子島氏女系の血を引いています。また、太平洋戦争時に国産ジェットエンジン開発に携わった種子島時休海軍大佐も種子島氏の一族です。

歴代島津家当主のうち、島津綱久の子孫にあたる各当主は種子島氏の血を引いており、香淳皇后も種子島氏の血を引いているため、昭和天皇と香淳皇后の子孫もまた種子島氏の血を引いています。

司馬遼太郎の紀行文『街道をゆく 種子島みち』には、時哲（前代当主の弟）と時邦（若い当主）が登場しています。

差配地

種子島氏の差配地は以下の通りです。

種子島：肥後氏の時代に土着しましたが、後に島津氏が地頭となり、種子島氏は地頭代を務めました。
屋久島、口永良部島、口之三島（上三島）：島津元久から与えられました。屋久島を巡り禰寝氏と激しく争いました。

系譜

（系譜については、太字は当主、実線は実子、点線は養子として記述されることが多いです。）

一族

一之臺 - 傍流の国上氏
種子島時貞 - 一之臺の養弟

参考文献

華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年
司馬遼太郎『熊野・古座街道、種子島みちほか』
川崎大十『「さつま」の姓氏―薩摩・大隅・奄美・日向の一部』高城書房 (2003)

史料

『懐中島記』（1689年）上妻隆直
『諸家大概』
『三州諸家系図』

関連項目

種子島
島津氏
鉄炮記
慈遠寺 - 種子島氏の祈願寺
種子島貴 - （ゲームクリエイター）
* 種子島経

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