種月寺

新潟市西蒲区に歴史を刻む曹洞宗の古刹「種月寺」

新潟県新潟市西蒲区に位置する種月寺（しゅげつじ）は、五百年以上の歴史を有する曹洞宗の寺院です。静かな山間に佇み、かつて越後国の中心地の一つであったこの地に、豊かな歴史と貴重な文化財を今に伝えています。

由緒と開創の経緯

種月寺の創建は室町時代中期の文安3年（1446年）に遡ります。当時の越後国守護であった上杉房朝公によって開基されました。房朝公は越後における曹洞宗の振興を志し、特に優れた禅僧として知られた耕雲寺（現在の村上市）の第三世住職、南英謙宗（なんえいけんしゅう）を招いて開山としました。これにより、種月寺は越後における曹洞宗の重要な布教拠点としての役割を担うことになります。

越後曹洞宗四箇道場の一つ

種月寺は、耕雲寺（村上市）、雲洞庵（南魚沼市）、慈光寺（五泉市）と共に、「越後曹洞宗四箇道場（しかどうじょう）」の一つに数えられています。これは、越後国内における曹洞宗の主要な修行道場および布教拠点として特に重要な位置を占めていたことを示しています。各寺院が越後の主要な地域に配されることで、広範な布教活動に貢献しました。種月寺がこの地域の禅宗史において果たした役割の大きさがうかがえます。

国の重要文化財である本堂

現在の種月寺の本堂は、江戸時代中期の元禄12年（1699年）に再建されたものです。建立から三百年以上の時を経たこの本堂は、その歴史的価値と建築様式が評価され、平成元年（1989年）9月2日に国の重要文化財に指定されました。江戸時代における仏堂建築の特徴をよく留めており、その荘厳な佇まいは訪れる人々に深い感銘を与えます。本堂内部には、開山である南英謙宗ゆかりの品々なども安置されていると伝えられています。

寺が守り伝える文化財

種月寺には、本堂以外にも貴重な文化財が多数伝承されています。特に、開山である南英謙宗の遺墨や書籍は、昭和29年（1954年）2月10日に新潟県の指定文化財となりました。これらは南英謙宗の思想や学識を今に伝える貴重な史料です。また、境内には樹齢を重ねた一本の銀木犀があり、平成16年（2004年）8月11日に新潟市の指定天然記念物に指定されています。秋には芳醇な香りを放つ白い小さな花を咲かせ、古刹の風情を一層引き立てます。これらの文化財は、寺の歴史や地域の文化を理解する上で欠かせない存在です。

アクセス情報

種月寺への訪問は、JR越後線の岩室駅から車で約11分です。静寂に包まれた境内は、日々の喧騒を離れ、心を落ち着かせたい人々にとって安らぎの空間を提供しています。歴史ある建造物や自然豊かな景観を楽しみながら、越後の禅宗の歴史に触れることができるでしょう。

種月寺は、その創建から現代に至るまで、越後曹洞宗の中心的な役割を果たし、数多くの貴重な文化財を守り伝えてきました。上杉房朝公の開基、南英謙宗禅師の開山という確かな歴史を持ち、本堂をはじめとする文化財は、その価値が国や県、市によって認められています。これらの遺産は、寺院が地域社会の精神的な拠り所として果たしてきた役割と、代々の住職や檀信徒によって守り継がれてきた努力の証です。種月寺は、単なる古い寺院ではなく、生きた歴史として、そして地域の宝として、これからも多くの人々にその存在を示し続けることでしょう。

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