雲洞庵

雲洞庵（うんとうあん）

金城山雲洞庵は、新潟県南魚沼市雲洞に位置する曹洞宗の寺院です。本尊として釈迦牟尼仏を祀り、「雲洞院」とも称されることがあります。

歴史と伝承

この寺院は、かつて南魚沼郡一帯を占めていた上田庄に開かれました。寺に伝わる縁起や仏教の歴史書である『日本洞上聯燈録』によると、その起源は奈良時代に遡るとされます。藤原鎌足の子である藤原房前の母、藤原先妣尼（さきのそひのあま）がこの地に草庵を結んだのが始まりと伝えられています。さらに養老元年（701年）、房前が母の菩提を弔う目的で、尼寺として創建されたとされます。

時代は下り室町時代、関東管領を務め直江津を拠点としていた上杉憲実によって、雲洞庵は禅寺として再興されます。寺伝によれば応永27年（1420年）、あるいは歴史書に従えば永享元年（1430年）のこととされます。憲実は、越後において初めての曹洞宗寺院とされる耕雲寺（現在の村上市）の住職、傑堂能勝の法を継いだ顕窓慶字（けんそうけいじ）を招いて再興を実現しました。この地が山内上杉氏と深い関わりを持っていたことから、憲実は叔父の上杉憲定が志半ばで果たせなかった雲洞庵再興の意思を受け継いだとも言われています。文安4年（1447年）に政務から退いた憲実は、晩年を雲洞庵で過ごしたと伝えられています。

その後、雲洞庵は大きく発展し、直末の寺院を27ヶ寺も持つ越後有数の大寺院へと成長しました。越後における曹洞宗の重要な修行道場として、耕雲寺、種月寺（新潟市）、慈光寺（五泉市）と共に「越後四箇之道場（えちごしかしどうじょう）」と称され、その地位を確立しました。

伝説と信仰

雲洞庵の正面に立つ朱塗りの赤門をくぐり、境内へ続く参道の下には、法華経の一字一句が書かれた石が埋められていると伝えられています。古くから「雲洞庵の土踏んだか、関興寺の味噌嘗めたか」という言葉で親しまれており、この参道を踏みしめてお参りすることで、大きな御利益が得られると信じられてきました。

戦国時代のゆかり

戦国時代には、北高全祝（ほっこうぜんしゅく）が第10世住職を務めました。北高全祝は雲洞庵で修行を積んで住職となり、永禄8年（1565年）には甲斐国の武田信玄の招きを受けて、信濃国佐久郡岩村田（現在の佐久市）にある竜雲寺の住職となりました。

また、越後国主となる上杉景勝や、その腹心として知られる直江兼続が幼少期をこの地で過ごし、第13世住職であった通天存達（つうてんそんたつ、長尾政景の兄）らから勉学を教わった寺としても知られています。

境内の見どころ

現在の境内には、永享年間に創建されたものを江戸時代に再建した鮮やかな赤門があります。また、本堂も同じく江戸時代に、出雲崎出身の名大工、小黒甚内（おぐろじんない）を棟梁として再建されたものです。これらの歴史ある建築物が、古刹の雰囲気を今に伝えています。

伝説上の開山

雲洞庵の開山である傑堂能勝（けつどうのうしょう）については、南朝の忠臣として名高い楠木正成の嫡孫、楠木正勝（くすのきまさかつ）と同一人物であるという伝説があり、雲洞庵でも公式にこの説を伝えています。境内の開山堂には、傑堂能勝、すなわち楠木正勝とされる木像と位牌が安置されています。

その他

雲洞庵は、2009年に放送されたNHK大河ドラマ『天地人』において、主人公である直江兼続の幼少期を描く舞台の一つとして登場し、「与六（兼続の幼名）の故郷」として紹介されたことで、その名がより広く知られるようになりました。

アクセス

所在地：新潟県南魚沼市雲洞660
拝観料：大人300円
公共交通：JR上越線・北越急行ほくほく線 六日町駅から南東へ約5km。南越後観光バス「雲洞入口」バス停より徒歩約30分。JR上越線塩沢駅から東へ約5km。
車：関越自動車道塩沢石打インターチェンジより約20分。上越新幹線越後湯沢駅から約30分。駐車場完備。

もう一度検索