稲井地域乗合タクシー

稲井地域乗合タクシー（いない号）

稲井地域乗合タクシーは、宮城県石巻市の稲井地区において、住民の日常的な移動を支える重要な地域交通手段として運行されています。「いない号」という親しみやすい愛称で地域住民に利用されています。

運行開始の背景

この乗合タクシーは、かつて石巻市が宮交石巻バスへ運行を委託していた廃止代替バス路線の運行終了に伴い、地域から公共交通機関が失われることを防ぐ目的で導入されました。従来のバス路線に代わる新たな交通手段として、地域住民の利便性維持と向上を目指し、運行が開始されたものです。

事業主体と運行体制

稲井地域乗合タクシーの事業は、「稲井地域乗合タクシー運行協議会」が主体となって運営しています。この協議会は地域の関係者によって構成されており、運行計画の策定や運営方針の決定などを行っています。実際の運行業務については、地元のタクシー事業者である三陸タクシーに委託されており、プロのドライバーが安全な運行を担当しています。運行形態は、時刻表に基づき決められたルートを運行する定時定路線方式を採用しており、利用者は事前に時刻とルートを確認して利用できます。

運賃体系と運営費用

運賃は利用区間によって異なります。稲井地区内のみでの移動、または稲井地区外のみでの移動の場合は、均一運賃として1回の乗車につき300円が設定されています。一方、稲井地区を跨いで移動する場合は区間制運賃が適用され、利用区間に応じて運賃が変動し、最大で700円となります。この運賃収入に加え、運行経費の一部を賄うための独自の仕組みとして、稲井地区内の全世帯から運行協議会に対して運行負担金が納められています。この負担金制度により、運賃収入だけでは不足しがちな運行経費を補填し、安定した運行を維持しています。

運行日と運休日

本乗合タクシーは、地域のニーズに合わせて運行されていますが、毎週日曜日は運休となります。また、国民の祝日および年末年始期間（12月31日から1月3日まで）も運行は行われません。これらの運休日以外は、基本的に運行されています。

沿革

稲井地域乗合タクシーの導入までの主な経緯は以下の通りです。

2004年（平成16年）9月1日: 稲井地域乗合タクシー運行協議会が設立され、運行に向けた準備が本格化しました。
2004年（平成16年）11月30日: 代替対象となる宮交石巻バスへの委託による廃止代替バス路線が運行を終了しました。
2004年（平成16年）12月1日: バス路線の廃止直後から、「いない号」として試験運行が開始されました。この期間に運行上の課題などを確認し、本格運行に向けた準備が進められました。
2005年（平成17年）4月1日: 試験運行での実績を踏まえ、本格運行が開始され、地域の重要な公共交通機関として定着しました。

主な路線

現在、稲井地域乗合タクシーには以下の2つの主要な路線があります。いずれの路線も、市街地側の起終点が平日と土曜日で異なります。

高木線

高木線は、水沼地区を起終点の一つとし、石崎、大瓜下、稲井駅前、石巻駅前を経由して市街地へ向かいます。市街地側の起終点は、平日は日赤病院前、土曜日はヨークタウン（ヨークベニマル中里店）となります。

運行本数: 平日は1日4往復、土曜日は1日2往復運行されます。
備考: 平日の水沼行き朝1便は、一部停留所を通過します。

真野金山線

真野金山線も水沼地区を起終点の一つとし、日向日影、沼津、稲井駅前、石巻駅前を経由して市街地へ向かうルートです。高木線と同様に、市街地側の起終点は平日が日赤病院前、土曜日がヨークタウン（ヨークベニマル中里店）です。

運行本数: 平日は1日4往復、土曜日は1日3往復運行されます。
備考: こちらの路線も、水沼行き朝1便は一部停留所を通過します。

稲井地域乗合タクシー「いない号」は、地域住民の生活を支える上で欠かせない存在であり、廃止されたバス路線に代わる交通手段として、地域社会に貢献しています。

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