稲荷山古墳 (高島市)

稲荷山古墳について

稲荷山古墳は、滋賀県高島市鴨に位置する前方後円墳であり、滋賀県指定史跡に指定されています。この古墳は6世紀前半に築造されたとされ、古墳時代を代表する遺跡の一つです。一般には「鴨稲荷山古墳」とも呼ばれています。

古墳の概要

古墳は高島平野の中心部、鴨川の右岸に立地しています。元々は稲荷を祀る塚であったとされ、1902年の道路改修工事によって家形石棺が発見されましたが、残念ながら現在の墳丘は完全に失われています。従って、古墳の原型は消失していますが、当時は南側に前方部を向けた長さ約50メートルの前方後円墳であったと推定されています。

本格的な調査は1923年に京都帝国大学によって行われ、その成果が発表されました。出土した家形石棺は凝灰岩製で、後円部から発見されたものです。この石棺の内部には、豪華な副葬品が多数見つかりました。栄華を物語る副葬品は東京国立博物館で保存されており、石棺自体は現地で保護されています。

家形石棺と副葬品

家形石棺の内寸は長さ9メートル、幅約1.8メートル、高さ約1.8メートルと推定され、石棺内からは金銅冠や沓、鏡、武器などが発掘されています。特に金銅製の冠や環頭大刀、魚佩などは当時の王権を示す信頼の品とされ、これらは他の古墳からも出土していますが、同じセットで見つかったのは稲荷山古墳と物集女車塚古墳のみであり、被葬者と王権との深い結びつきを示唆しています。

古墳の歴史的背景

この古墳は、継体天皇を支えた首長やその親族の墓と考えられており、出土品からは朝鮮半島との文化交流の影響が強く見られます。稲荷山古墳の築造時期は出土した須恵器の年代から6世紀前半に位置づけられ、近江の地域勢力だけではなく、畿内王権との関連も示唆されています。

また、古墳の石棺は遠く離れた二上山から運ばれたもので、その運搬は当時の技術力を示すと共に、権力者の威光を誇示するものであったと考えられています。現在、石棺は元々あった位置に保たれ、公開されており、訪れる人々に古代の文化を伝えています。

調査と発見の経緯

稲荷山古墳の発見は1902年の道路改修工事にさかのぼります。当初は村人たちによる開発が考えられましたが、古墳を神聖視する伝説が残っていたため、開発は進みませんでした。しかし、工事の際には古墳の存在が知られ、石棺が発見される運びとなりました。発見当初、遺体の側には武器が安置され、荘厳な副葬品の数々が注目を浴び、後の調査と研究に大きな影響をもたらしました。

その後、大学の調査によって被葬者の性別は男子と推測され、出土品の多様性からその曾祖先が朝鮮半島出身であった可能性も指摘されています。これらの研究は、稲荷山古墳の歴史的意義をさらに深め、古代日本における文化的交流の証しとして価値を持っています。

結論

稲荷山古墳は、滋賀県における古代の歴史と文化を学ぶ上で重要な遺構であり、古代の埋葬習慣や社会構造を理解する上での貴重な資料となっています。古墳からは多くの情報が得られ、研究が進むことでさらなる発見が期待されます。

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