穏健な多党制

穏健な多党制の概念

穏健な多党制は、政治学において特定の条件を満たす多党制の形態であり、一般的には政党間のイデオロギー的な溝が浅いことが特徴です。この用語は、政治学者のジョヴァンニ・サルトーリによって提唱されました。

特徴

穏健な多党制の具体的な条件は次の通りです。
1. 政党の数: 議席を持つ政党の数は通常3から5程度です。ただし、それ以上の数が存在しても、主要な政党が三つ以下のブロックに分かれていれば、この条件には適合します。
2. 体制論争の不在: 政党間での体制に関する対立がなく、これにより予測可能な政治環境が形成されます。
3. 政策の距離: 政党間の政策の違いが小さいため、連立政権が組成しやすくなります。
4. 双系野党の不在: 政党やそのグループが二ブロックに分かれている、あるいは三ブロックに分かれていて二つのブロックが連立を形成している状態などが考えられます。このような状態において、常に政権から排除されている政党のブロックが中道に位置することが求められます。

これらの条件を満たすことにより、穏健な多党制は実現されます。特に、政党間の政策距離が小さいことは、連立政権の形成において非常に重要な要素です。全ての政党に政権参加の機会があるため、特定の政党が排除されることが少なく、安定した政治運営が期待されるのです。

穏健な多党制と二大政党制の違い

穏健な多党制は二大政党制と非常に似ていますが、いくつかの重要な相違点があります。二大政党制は通常、議席のある政党の数が3であり、その中で二つのブロックに分かれています。また、二つのうちの一つが政権を担っている場合、そのほかの政党は常に政権外に置かれています。これに対して、穏健な多党制では政策距離が小さく、パーティ間の競争がより円滑です。

具体例

欧州の多くの成熟した議会制民主主義国、特に西ヨーロッパ及び北ヨーロッパでは、穏健な多党制がしばしば見られます。ここでは、比較的大きな保守派や社会民主主義の政党が政権を交代し、またそれより規模が小さい政党（自由主義、環境主義、共産主義、民族主義など）が必要に応じて連立を組みます。具体的には、ドイツ、ベネルクス三国、スカンディナヴィア国家が典型的な事例として挙げられています。特定の状況下では、キージンガー政権とメルケル政権のように、保守政党と社会民主主義政党が大連立を組むこともあります。

まとめ

穏健な多党制は、特に政治的安定を重視する国の中で効果的な政治体制を構築するための一つの手段として認識されています。この状況下では、各政党が政権に参加するチャンスがあり、多様な意見を反映出来る環境が整うことが期待されます。

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