穏健党

スウェーデン穏健党：中道右派の台頭と政策転換

スウェーデンの穏健党（Moderaterna）は、保守自由主義を掲げる中道右派政党です。1904年の設立以来、スウェーデン政界において重要な役割を果たしており、近年では2022年の総選挙で政権を奪還しました。本稿では、穏健党の歴史、政策、党勢の変遷について詳細に解説します。

穏健党の歴史：保守主義から中道への変遷

穏健党は、かつては穏健統一党(Moderaterna Samlingspartiet)として知られていました。2006年の選挙を機に改名し、現在に至ります。当初は減税を政策の中心に据え、新自由主義的な色彩が強かったものの、フレドリック・ラインフェルト党首（2003年～2015年）時代から、伝統的な福祉国家路線からの急激な転換を抑制する方向に転換しました。これは、長年政権を担当してきた社会民主労働党の牙城を崩すため、保守政党としてイメージ改善を図る戦略的な判断でした。

ラインフェルトの後、党首となったアンナ・シンベリ・バートラは同党初の女性党首として党を率いました。

穏健党の政策：福祉国家と自由主義経済のバランス

穏健党は、ユーロ導入、EU加盟、NATO加盟を支持しています。経済政策については、当初は自由主義路線を掲げていましたが、ラインフェルト時代以降は社会民主労働党の福祉国家路線との整合性も重視するようになり、急激な政策転換は避けられました。

しかし、福祉国家の財政持続可能性が危うくなる中、歳出削減か増税かの選択を迫られています。穏健党は、年金制度改革において、政府の帳簿外で年金の一部をリスク資産運用するという抜本的な改革を推進してきました。この政策はEU加盟国間で意見の対立を生むなど、国内外に影響を与えています。

外交政策においては、EUの東方パートナーシップ協定に積極的に関与し、特にポーランドと緊密な連携を保っています。ロシアとのパイプライン建設問題など、EU全体の戦略にも影響を与えています。

党勢の変遷：野党から与党へ、そして再び

スウェーデンでは、長年社会民主労働党が政権を担ってきました。穏健党は長らく野党でしたが、社会民主労働党の不人気や福祉国家路線の見直し機運の高まりを背景に、2006年の総選挙で躍進し、連立政権を樹立しました。

しかし、2014年の総選挙では野党に転落。2022年の総選挙では、右派陣営が勝利し、ウルフ・クリステルソン党首が首相に就任しました。穏健党は議会第3党に甘んじたものの、政権奪還に大きく貢献しました。

まとめ：穏健党の現在と未来

穏健党は、スウェーデンにおける主要政党として、歴史的変遷の中で政策を調整しながら、常に変化する社会情勢に対応してきました。福祉国家路線と自由主義経済のバランス、そしてEUやNATOとの関係強化など、多様な政策課題に直面しています。今後、穏健党がどのような政策を展開し、スウェーデンの政治にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。

もう一度検索