穴 (モノローグ集)

『モノローグ集 穴』

劇作家、脚本家、映画監督、そして舞台演出家としても活躍する渋谷悠作氏の手がけた戯曲集、それが『モノローグ集 穴』です。この一冊には、現代社会に生きる人々の心の奥底にしまい込まれた、あるいはいつか消えてしまいそうな感情や記憶を掘り起こした、珠玉の一人芝居が多数収録されています。

概要

本書は、女優モノローグ19篇と俳優モノローグ20篇、合わせて計39篇のモノローグ台本によって構成されています。作者が掲げたテーマは「書かないと消えそうなもの」。それぞれの台本は、あたかも39人それぞれの心の内側を覗き込むかのように、彼らの抱える葛藤や秘めた思いを描き出しています。

ここで言う「モノローグ」とは、演劇や映像作品において、登場人物が一人で語る形式の一人芝居を指します。本書に収められた作品は、いずれも5分から10分程度で演じられるよう構成されており、明確な起承転結を備えています。短時間でありながら、一つの物語、あるいは人物の心理の変遷が凝縮されている点が特徴です。

作者である渋谷悠氏は、「日本の演劇界・映画界にモノローグ文化をさらに浸透させたい」という強い思いを抱いています。そのビジョンの実現を目指し、本書に収録されている全てのモノローグ台本は、作者に対する使用許可の申請や上演料の支払いを不要としています。これにより、多くの表現者がこれらの作品を自由に活用し、モノローグという表現形式に触れる機会が増えることが期待されます。

また、本書に続くモノローグ集の第二弾として、『モノローグ集 ハザマ』が2022年夏に出版される予定です。『ハザマ』では、『穴』と同様の5分〜10分程度の作品に加え、SNSでの動画投稿やオーディション時の宣材資料として手軽に利用できる、2分程度の短いモノローグも収録される計画が進められています。

収録作品

『モノローグ集 穴』には、前述の通り女優モノローグ19篇と俳優モノローグ20篇が収められています。これらは便宜上性別で分類されていますが、『祈り』、『プレゼンテーション』、『ざらざら』、『点繋ぎ』といった作品は、性別に関係なく演じることが可能だとされています。

収録されているモノローグは、その形式も多岐にわたります。聴き手が発話者の感情を強く引き出す存在であるもの、聴き手がインタビュアーのように話を引き出す形式（例：『インタビュー』）、聴き手はいるものの物理的な反応を示さない対象（例：墓前での語りかけ、手紙への独白）、さらには特定の対象を持たない純粋な独白や詩のようなものまで、様々なタイプの作品が揃えられています。この多様性は、俳優や演劇を学ぶ人々にとって、様々な役柄や状況での演技を練習する上で非常に有効な訓練ツールとなり得ます。

本書に収録されている作品の一部は、作者である渋谷悠氏によってオンラインでも公開されています。作品タイトルの後に（★）が付いているものは、モノローグ台本公開サイトで無料公開されている作品です。また、（☆）が付いているものは、渋谷氏自身がYouTubeで朗読を公開している作品です。

以下に、本書に収録されているモノローグ作品のタイトル一覧を記します。

女優モノローグ

生命線（自らの掌をカッターで傷つけ、生命線を延ばそうとする女）
生まれ変わる
メデューサ
好き（★）
アロマセラピー
息子
インタビュー（★）
勧誘
魚（★）
穴（★）
作り話（★）
メリーゴラウンド（★）
宇宙人
最後の営業（★）
離婚届（★）
強制朗読事件（元彼の葬式で遺書を朗読させられる女）（★）
幸あれ
うん（★）
祈り（神に祈りを捧げるホームレスの女）

俳優モノローグ

ＴVゲーム
ソクバッキー
幻聴（亡くなった母親の声の幻聴が聞こえる男）（★）
久保さんの人生が変わった日（☆）
ホストの説教（★）
反省会
マイクロビキニ
プレゼンテーション
逸郎さん（★）
ざらざら
悪魔
口紅（妻に浮気を疑われ、弁解する女装趣味の男）（★）
弁慶によろしく（★）
共食い（★）
プリン体
白紙（★）
証明写真（★）
ヒモ理論（★）
タイムカプセル
* 点繋ぎ（★）

これらの作品は、様々な背景を持つ人々の複雑な内面を描き出し、演じる側にとっては深い洞察と表現力が求められる挑戦的な素材となるでしょう。また、一人芝居という形式を通じて、自身の演技力を磨きたいと願う全ての人々にとって、『モノローグ集 穴』は貴重な資源と言えるでしょう。

もう一度検索