空気系

空気系・日常系アニメとは

空気系、または日常系と呼ばれるアニメ作品群は、2000年代中頃以降に登場し、特に若い女性キャラクターたちの会話を中心に、大きな事件や出来事を伴わない、何気ない日常を淡々と描写する点が特徴です。2006年頃からインターネット上で使われ始めた用語で、その作品世界での「空気」を描いていることから空気系といわれるようになりました。海外ではCGDCT（Cute Girls Doing Cute Things：かわいい女の子たちがかわいいことをする）とも呼ばれています。

ジャンルへの論評

「空気系」「日常系」は、主にアニメと漫画を対象とした言葉で「若い女の子たちのまったりとした日常を延々と描くタイプの作品」とまとめられますが、明確な定義は存在しません。評論家や作家によって様々な解釈や論評が行われています。

前島賢は、空気系（ないし日常系）と呼ばれる作品について言及し、『らき☆すた』、『けいおん!』、『あずまんが大王』などを例に挙げて論評しています。これらの作品は、セカイ系に見られるような男性キャラクターが少ないことが特徴とされています。

小森健太朗は、『あずまんが大王』『苺ましまろ』『ひだまりスケッチ』『みなみけ』『らき☆すた』『Aチャンネル』『ゆるゆり』『けいおん!』を空気系作品の例として挙げ、これらの作品に共通する特徴として、恋愛・目標・進学といった時間を感じさせる要素がない「時間の排除」を指摘しました。

宇野常寛は、コミュニケーションそれ自体が自己目的化した物語形式を規定し、美少女キャラクターのコミュニケーションそのものを描くという点において、これらの作品を90年代末に支持されたセカイ系に対するゼロ年代の後継であると評価しました。一方で、宇野は漫画、アニメの「空気系」作品と実写作品との違いとして、前者は男性キャラクターが排除されている（ホモソーシャルである）ことに着目し、「萌え」という事実上のポルノグラフィ要素が付加されていると指摘しました。

広瀬正浩や禧美智章は、『けいおん!』を例にとり、同作は物語を持たないのではなく、既存の作劇法に当てはまらない表現構成によって登場人物の成長や人間関係の広がりが描かれているとの分析を示し、空気系というジャンル規定そのものに疑問を呈しました。

『まんがタイムきらら』編集長の小林宏之は、読者の日常との繋がりができたとき、キャラや物語にリアリティや魅力を感じさせる真の日常系となると述べています。

代表的作品

空気系・日常系の作品として、『あずまんが大王』、『To Heart』、『うる星やつら』などが挙げられます。2000年代には、『まんがタイムきらら』の創刊や『涼宮ハルヒシリーズ』のアニメ化などが、空気系ブームの流れを加速させました。2007年以降は、『ひだまりスケッチ』、『らき☆すた』、『けいおん!』などが人気を博しました。

2010年代には、『ご注文はうさぎですか?』『きんいろモザイク』『がっこうぐらし!』『NEW GAME!』『ゆるキャン△』とアニメ化が続き、2019年時点では1ジャンルとして認識されたとの見方もあります。

他の作品類型との関係

空気系・日常系は、セカイ系としばしば対比されます。セカイ系が主人公とヒロインが「引き裂かれる」ことにリアリティを見出すのに対し、日常系（空気系）は「引き裂かれることのない」日常空間にリアリティを見出すものとして対比されています。

また、ループものや日常の謎といったジャンルとも関連性があります。ループものは、延々と繰り返される日常の比喩として使用され、日常の謎は、日常描写の中になんらかのギャップ・意外性を織り込まなければならない点が共通性として挙げられます。

まとめ

空気系・日常系アニメは、2000年代中頃から現在に至るまで、多くのアニメファンに支持されてきました。その特徴は、何気ない日常を描くことであり、視聴者は作品世界に没入し、癒やしや共感を得ることができます。今後も、空気系・日常系アニメは、時代に合わせて変化しながら、アニメ文化の一翼を担っていくことでしょう。

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