窪田静太郎

窪田 静太郎

（くぼた せいたろう / しずたろう）

1865年11月10日（慶応元年9月22日） - 1946年10月6日

日本の内務官僚、法学者、社会事業家。法学博士。

略歴

岡山藩の藩学師範教授であった窪田善之の長男として生まれる。旧制岡山中学、第一高等学校を経て、1891年7月、帝国大学法科大学の法律学科（英法）を首席で卒業。同年、内務省に入省した。

内務省では、後藤新平のもとで日本の保健衛生制度の確立に尽力した。伝染病予防法や癩（らい）予防法といった重要な衛生関連法規の制定を推進し、事務官でありながら初めて衛生局長に就任するという異例の人事となった。また、後藤新平の影響もあり、衛生行政だけでなく、より広範な社会問題や社会政策全般に関心を寄せた。社会政策学会が発足すると、その会員となり、学術的な議論にも積極的に参加した。

内務官僚として勤務する傍ら、農商務省の官僚も兼任した。1900年に農商務省商工局内に臨時工場調査掛が設けられ、当時の工場労働者の実態を把握し、将来的な工場法制定に資するための大規模な調査が開始されると、窪田はその主任に指名された。調査スタッフには、後に社会政策研究や労働問題に関する著作で知られる桑田熊蔵や横山源之助らを抜擢した。この調査の結果は、1903年に日本の初期労働問題研究において重要な文献となる『職工事情』として刊行され、日本における労働行政の基礎を築く上で貴重な資料となった。

また、社会事業の分野においても顕著な活動を展開した。内務省の有志である参事官の久米金弥や警視庁の松井茂らとともに貧民研究会を組織。この会には、社会政策学者の桑田や、感化院設立に尽力した原胤昭、北海道家庭学校を創設した留岡幸助といった実務家も参加し、後に地方局の井上友一や生江孝之も加わった。窪田はこの研究会を通じて、特に井上友一に対し、慈善事業の重要性を強く説いた。衛生局長としては、1907年に制定された「癩豫防ニ關スル件」において中心的な役割を果たしている。

1908年には中央慈善協会を設立し、井上や桑田らとともに救済事業の実態調査を実施。さらに大正期には、井上や桑田らと共に救済事業調査会の委員を務め、日本の社会労働行政の整備と充実に大きく貢献した。

官僚としてのキャリアの後半では、行政裁判所の評定官、部長を経て、約10年間にわたり行政裁判所長官という司法行政の要職を務めた。その後、枢密顧問官に任命され、国家の重要事項に関する審議に携わった。

行政官としての職務に加え、学術団体や社会活動にも参加した。大正後期には東京統計協会の副会長として阪谷芳郎会長を補佐し、阪谷の退任後は同協会の会長を務めた。多岐にわたる功績に対し、多くの位階や勲章が授与された。1916年には法学博士号を取得している。

養子に裁判官となった窪田幹太がいる。

その生涯を通じて、日本の公衆衛生、社会政策、労働行政、社会事業、司法行政といった幅広い分野の発展に貢献し、後世に多大な影響を与えた人物として記憶されている。

墓所は東京都府中市にある多磨霊園に置かれている。

著書

『窪田静太郎集』日本社会事業大学、1980年。

参考文献

秦郁彦編『日本近現代人物履歴事典』東京大学出版会、2002年。
* 上田正昭他『日本人名大辞典』講談社、2001年。

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