窰洞

窰洞（ヤオトン）: 中国の住宅の一形態

窰洞は、中国の北部地域、特に陝西省や甘粛省、山西省、河南省などの農村に広く見られる独特な住宅様式です。このタイプの住居は、軟らかく多孔質な黄土高原の表土である沈泥を掘り抜くことで形成され、約1千万人の人々がこの方式で生活しています。窰洞は、単純な穴ではなく、地域特有の文化や環境に適応した巧妙な住居です。

住居のタイプ

窰洞には主に二つの施工方式があります。それは「洞穴式」と「地坑式」です。

洞穴式

洞穴式は、山の斜面や崖に横に掘られた住居です。このスタイルの洞穴は長方形で、幅は3〜4メートル、奥行きは約10メートルほどあります。特徴的なのは、天井の形状がヴォールト状になっていることで、天井の頂点から地面までの高さは約3メートルにも達します。

地坑式

地坑式は、地面を掘り下げて形成されます。一般的には、一辺の長さが約15メートル、深さが7〜8メートルの土を掘り、その周囲に3つの入り口を持つ横穴を設け、四合院のような形状を形成します。中には中庭があり、ここは草木を植えたり憩いの場として使用されます。各洞穴の位置は東西南北を意識して配置され、適切な採光が考慮されています。

特に河南省近郊の地坑式窰洞は、温暖多雨な気候と密接に関連しています。そのため、外側は石や煉瓦で覆われ、雨水による浸食を防いでいます。一方で、陝西省以西の乾燥地域では、外壁は藁を混ぜた黄土で構成され、施設の輪郭が柔らかい印象を与えます。家族が増えた場合の対応にも地域ごとの特徴があります。東部では新たに窰洞を掘る傾向がありますが、西部では既存の中庭を拡張するケースが多いです。

住居内の工夫

窰洞の内部は、明るさを保つために白石灰で塗られることが一般的です。このような工夫により、住居は断熱性や保温性に優れ、冬は暖かく、夏は涼しい環境を提供します。ただし、通風が悪いため湿気がこもりやすく、その点に注意が必要です。特に寒冷地域では、床暖房として「火炕（カン）」が設けられることも特徴的です。

終わりに

窰洞は、中国の伝統的な住居スタイルの一つであり、地域ごとの特性や文化が反映された興味深い住まい方の一例です。これらの住居は、単なる住まい以上のものであり、地域の歴史と人々の暮らしを象徴する存在です。

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