立ち木トラスト

立ち木トラストとは、開発計画がある土地の樹木を買い取り、その木に名札を取り付けて「立ち木権」を主張する抗議活動の一形態です。この活動は、開発を物理的に困難にすることを目的としています。

立ち木トラストの概要

立ち木トラストは、立木に関する法律を根拠としています。訴訟などの法的手段とは異なり、多くの市民が比較的容易に参加できるという特徴があります。しかし、国有林や公有林では立ち木トラストを実施することはできません。

立ち木トラストが行われた場合、開発事業者は、その土地に植えられている全ての樹木の所有者から開発の同意を得る必要があり、開発を進めるのが困難になります。しかし、公共事業の場合には、土地収用法に基づき、立ち木を含むすべての土地が収用されることもあります。

立ち木トラストの事例

立ち木トラストは、過去に様々な開発プロジェクトに対する反対運動で活用されてきました。以下に主な事例を挙げます。

下筌ダム：下筌ダム建設に反対する運動では、「闘争記念樹」という形で立ち木トラストの原型が見られました。
三里塚芝山連合空港反対同盟：成田空港（現在の成田国際空港）の建設に反対する運動において、反対派は土地収用を困難にするため、一坪共有地運動と並行して立ち木トラストを実施しました。この運動は日本共産党が主導しました。
設楽ダム：東九州自動車道の一部区間の建設において、あるミカン畑の所有者が土地収用を拒否するために立ち木トラストを実施しました。しかし、最終的には強制収用が行われ、道路は開通しました。
中央新幹線：リニア中央新幹線の建設に対して、山梨県中央市で市民団体が立ち木トラストを行っています。

立ち木トラストに関する裁判例

岐阜県山岡町のゴルフ場開発を巡る訴訟では、立ち木トラスト運動を行っていた所有者が岐阜県の林地開発許可の取り消しを求めました。しかし、2001年3月13日の最高裁判決では、森林法に基づき行政処分の取り消しなどを求められるのは、「災害の直接的被害が予想される範囲内での居住者」に限るとの判断が下されました。この判例は、立ち木トラストの有効性と限界を示しています。

立ち木トラストの意義と課題

立ち木トラストは、市民が開発に対して意思表示をするための有効な手段の一つです。しかし、公共事業においては、土地収用法によってその効果が制限されることもあります。また、立ち木トラストを行うためには、対象となる樹木を購入する必要があるため、資金調達も重要な課題となります。

関連情報

立ち木トラストに関連する法律や運動については、以下の情報も参照してください。

立木：土地に生えている樹木のこと。
立木ニ関スル法律：立木に関する権利などを定めた法律。
一坪地主：土地の共有化によって土地収用を困難にする運動。
ナショナル・トラスト：歴史的建造物や自然環境などを保護する運動。

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