立久恵峡

立久恵峡について

立久恵峡（たちくえきょう）は、島根県出雲市の南端に位置し、神戸川（かんどがわ）上流に広がる約2キロメートルの峡谷です。この地域は「立久恵」として国の名勝および天然記念物に登録されており、さらに周辺は立久恵峡県立自然公園として整備されています。この美しい峡谷は、出雲市駅から南へ約10キロメートルの距離にあり、神戸川に沿って形成された絶景スポットです。特に、1キロメートルにわたる奇岩や岩柱が立ち並び、左岸側には50メートルもの高さを誇る絶壁が迫力を増しています。

この地域はその特異な景観から「山陰の耶馬渓」とも称され、多くの観光客を惹きつけています。峡谷には、屏風岩、天狗岩、神亀岩、天柱峯、袈裟掛岩、烏帽子岩、猿岩、ろうそく岩、天然大仏像といった名所が点在しています。これらの自然の造形物は、長い年月をかけて浸食や風化によって形成されたものです。

「立久恵」という名称の由来は定かではなく、杭が立ち並ぶような景観から「立杙（タチクイ）」という名が転化したとの説があります。1927年に国の名勝および天然記念物として認定され、1964年には県立公園として指定されました。さらに、この場所には古くから存在した真言系の亀渕山飛光寺があったとされていますが、詳細な記録は残っておらず、1754年の文献によれば無住の寺として描かれています。また、天柱峯の岩柱のふもとには1919年に建立された立久恵山霊光寺が存在します。近くには立久恵峡温泉もあり、観光客の憩いの場として利用されています。

水害と復旧

立久恵峡は2006年7月に発生した豪雨により深刻な被害を受けました。特にキャンプ場「わかあゆの里」は完全に損壊し、撤去される運命にあった一方、立久恵峡ユースホステルも廃止に追い込まれました。その結果、峡谷周辺の交通やアクセスの道を遮る3つの橋も被害を受け、多くのエリアが通行止めとなりました。しかし、現在ではこれらの橋の架け替え工事が完了し、峡谷内の遊歩道が再開放されるなど、観光名所としての復旧が進んでいます。

2008年7月には豪雨災害復旧工事が完了し、これにより周辺の観光や宿泊施設も以前の状態に戻りました。2011年5月1日には「新生わかあゆの里」がオープンし、約3ヘクタールの敷地内には約50サイトのキャンプサイトや10サイトのオートキャンプ場、研修施設の管理棟、さらには多目的広場が整備されています。

アクセス

立久恵峡の所在地は、島根県出雲市乙立町です。交通アクセスは、JR出雲市駅から一畑バスを利用し約30分で、「立久恵峡」停留所下車後にすぐのところに位置しています。かつては一畑電気鉄道立久恵線がこの地域に近寄っていましたが、自然災害の影響を受け1964年に休止、その後1965年に廃線となりました。その跡地は現在、国道184号上り線として利用されています。立久恵峡はその自然の美しさと歴史的な魅力で、訪れる者に貴重な体験を提供し続けています。

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