立山の歌

立山の歌

『立山の歌』、またの名を『立山の御歌』は、昭和前期に富山県で広く歌われていた楽曲です。この曲の起源は、1924年に当時の皇太子が行啓した際、立山を眺めた際の感動を詠んだ和歌に基づいています。翌年の1925年、和歌は歌会始において「山色連天」を題材とし、多くの県民に感銘を与えました。

その後、1957年に天皇が即位した際、立山に由来するこの和歌が楽曲として編曲されることになります。富山県の当時の音楽界の権威である岡野貞一が曲を付けることを依頼されました。この曲の旋律は、その後県民歌に近い存在となり、県民の心の中に深く根付くこととなりました。

加えて、和歌は立山頂上の三ノ越にある巨岩に刻まれ、歌碑としても残されることになります。苦難の末に完成したこの歌碑は1927年に除幕され、県民からは歌が斉唱されるなど、喜ばしい行事となりました。このように、立山の歌は富山の県民にとって特別な意味を持つ楽曲となったのです。

富山では市役所から学校にこの歌が配布され、式典では必ずといってよいほど演奏されるようになりました。『御歌』は県民にとって実質的な県民歌として受け入れられていましたが、残念ながら公式な県民歌としての認定はされませんでした。それでも、この歌は心の中で大切にされ、愛唱され続けました。

昭和22年、太平洋戦争終結後には、再度天皇が富山県を訪れる際、『君が代』とともに『御歌』が合唱される機会もありました。また、昭和33年に富山国体が開催された際、新たに制定された富山県民の歌がある中でも、この『御歌』も演奏され、その存在感を示しました。

1970年には、エドモンド・ヒラリー氏が立山を訪れた際に、日本山岳会のメンバーが『御歌』を歌ったところ、ヒラリー氏は深い敬意を表したというエピソードも生まれました。彼は立って聴き入っていたということからも、立山の歌が持つ特別な力を感じられる出来事でした。

今日では、立山に関する覚え書きとして、三ノ越のみならず、雄山神社の境内、呉羽山、宇奈月公園の各地に計4基の歌碑が建立されています。これらはいずれも富山県に根ざした文化の象徴として、訪れる人々に思い出や感動を与え続けています。『立山の歌』は、これからも富山の人々の心に刻まれ続けるでしょう。

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