立見辰雄

立見辰雄：日本の鉱床学、地球化学研究に貢献した巨人

立見辰雄(1916年2月27日-1997年10月17日)は、20世紀後半の日本の地質学、特に鉱床学と地球化学において重要な役割を果たした学者です。東京大学教授を歴任し、南極観測隊への参加、画期的な硫黄同位体の研究など、多様な分野で顕著な業績を残しました。

名門の出自と学究への道

陸軍大将を務めた立見尚文を祖父、陸軍大佐で貴族院議員を務めた立見豊丸を父にもつ名家に生まれた立見辰雄は、旧制成蹊高等学校を経て、1939年に東京帝国大学理学部地質学科を卒業しました。加藤武夫教授の指導の下、鉱床学を専攻し、その後の研究人生の礎を築きました。卒業後は兵役を経て、1942年に東京帝国大学理学部助手として研究活動を開始しました。資源科学研究所での勤務などを経て、1949年から東京大学教養学部助教授、1957年に理学部助教授に転任、そして1968年には地質学第三講座（鉱床学）教授に昇任しました。1976年に東京大学を停年退職しました。

南極探査と鉱床研究

立見辰雄の研究活動は、国内にとどまりませんでした。1956年から1958年にかけて行われた第一次南極越冬隊の隊員として、南極の地質調査に参加しました。さらに、1959年から1960年にかけては第四次南極観測隊の隊長を務め、南極における地質学研究を大きく推進しました。学生時代は山岳部に所属するアルピニストでもあった彼の探究心と行動力は、南極という極地での研究活動にも如実に表れています。

彼の学問上の最大の功績は、博士論文のテーマでもあった塊状硫化物鉱床の研究です。東京大学教授だった渡辺武男の後任として、日本の多くの層状鉱床の成因を同成鉱床と位置づけたことは、日本の鉱床成因論に大きな影響を与えました。

特に注目すべきは、硫黄同位体の研究です。立見は、日本の鉱床産硫化鉱物を用いて、鉱床中に共存する2種の硫化鉱物間に有意の同位体分別があることを実証しました。これは、当時の学会の常識を覆す発見であり、硫黄同位体温度計の活用という新たな研究分野を開拓する契機となりました。

教育者としての貢献

東京大学教授として、立見辰雄は多くの学生を育成しました。彼の指導の下で育った研究者たちが、日本の地質学研究を支え、発展させていきました。その教育者としての貢献もまた、彼の生涯における重要な業績の一つです。

出版物

立見辰雄は、研究成果を分かりやすく一般向けに解説した著書も多数出版しています。代表的なものとして、『地中のたから』(1952年)や『南極の一年』(1959年)などがあり、一般の人々にも地質学への関心を高めることに貢献しました。また、専門家向けには『現代鉱床学の基礎』(1977年)などの編著書も残しています。

まとめ

立見辰雄は、鉱床学者、地球化学者、南極探検家、そして教育者として、多方面で活躍した稀有な人物でした。彼の研究は、日本の地質学研究の発展に大きく貢献し、後世に多大な影響を与え続けています。彼の業績は、日本の科学史において重要な位置を占めており、これからも多くの人々に記憶されるでしょう。

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