資源科学研究所

資源科学研究所

資源科学研究所は、かつて日本に存在した資源調査を目的とした研究機関で、「資源研」の略称で知られています。太平洋戦争中にその役割を担い、戦後は国立科学博物館に吸収される形でその歴史を終えました。

概要

1941年、文部省により資源科学研究所が設立されました。その背景には、大東亜戦争下における大陸の資源調査という目的がありました。研究所は、動物、植物、地質、地理、人類の5部門から構成され、青山高樹町の実業家・立川龍の邸宅を買収し、研究所として利用しました。しかし、1945年の東京大空襲により、高樹町の施設は焼失してしまいます。

戦後、GHQの指示により、研究所の廃止が閣議決定されます。しかし、文部省からの研究委託により、研究所は存続の道を歩みます。設立当初の目的は失われたものの、戦後は国内の資源調査が主な業務となりました。1946年には、新宿区百人町の陸軍技術研究所跡地へ移転し、復興に貢献しました。

1971年、資源科学研究所は国立科学博物館に吸収合併され、その歴史に幕を閉じます。コレクションや職員の一部は国立科学博物館に引き継がれましたが、資源調査の業務は引き継がれませんでした。現在、国立科学博物館の研究部門がある新宿区百人町の敷地は、かつて資源科学研究所があった場所です。

資源科学研究所の特徴として、研究室単位ではなく、テーマごとに研究班が柔軟に編成される運営方式が挙げられます。また、開所から閉所まで「資源科学研究所彙報」を発行し、敗戦後の混乱期にも研究報告を出版していました。

国立科学博物館との合併

合併は、国立科学博物館側の要請によるものでした。当時、国立科学博物館は上野公園の一角に位置し、手狭な状況でした。増築が難しく、高層化も制限されていたため、筑波研究学園都市への移転が検討されましたが、東京からの距離や学園都市建設の遅延により断念されました。そこで、資源科学研究所の敷地が注目され、合併と上野の研究部門の移転が決定されたのです。

沿革

資源の不足に対し、基礎知識の養成が必要であるという考えから、日本動物学会、日本植物学会、日本地質学会など6学会が博物館の拡充を求めました。その結果、帝国議会で「国立自然博物館設立の件」「国立天然資源研究所設置の件」に関する請願が採択され、1941年度には天然資源研究所に関する予算が認められました。

1941年1月16日 - 関係学会による資源科学諸学会聯盟が文部省に設置される
1941年12月9日 - 文部省資源科学研究所として開所
1943年10月 - 資源科学研究所の疎開が決定
1944年1月29日 - 資源科学諸学会聯盟が財団法人化
1945年5月 - 空襲により高木町の施設が焼失
1946年 - 新宿区百人町の陸軍技術研究所跡に移転
1946年4月13日 - 官制廃止となり以降は財団法人資源科学諸学会聯盟に附設
1961年4月 - 財団法人資源科学諸学会聯盟を財団法人資源科学研究所と改称
1971年 - 国立科学博物館に吸収合併され、財団法人は解散

関連人物

国立当時

柴田桂太 - 植物生理学者・生化学者・微生物化学者。初代所長。
岡田彌一郎 - 動物学者。
鈴木好一 - 地質学者。
津山尚 - 植物学者。
馬場菊太郎 - 動物学者。
石橋正夫 - 鉱物学者。
加藤光次郎 - 動物学者。
原寛 - 植物学者。
多田文男 - 地理学者（兼任）。
椎野季雄 - 動物学者。
高井冬二 - 地質学者（兼任）。
林孝三 - 植物学者。
立見辰雄 - 鉱物学者。
川西正鑑 - 地理学者（兼任）。

財団移行後

北沢右三 - 生態学者。
倉沢秀夫 - 湖沼学者。
中川宏 - 昆虫学者。
中村守純 - 魚類学者。
花岡利昌
堀克重
三井嘉都夫 - 地理学者・陸水学者。

関連事項

外邦図

市ヶ谷の陸軍参謀本部が所持していた外邦図は、GHQからの接収を避けるため、戦後からサンフランシスコ講和条約締結までの間、資源科学研究所で保管されていました。また、資源科学研究所自身も戦前から外邦図を所持しており、その後、これらの外邦図は各地の大学や研究機関へ頒布されました。

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