立谷教会跡

五島に眠る信仰の証、立谷教会跡

長崎県五島市玉之浦町にひっそりと佇む立谷教会跡。かつてこの地にあった教会は、五島におけるカトリック信仰の黎明期を象徴する存在でした。守護聖人として聖ペトロと聖パウロに捧げられたこの教会について解説します。

五島初のカトリック教会

1878年、立谷教会は五島で最初のカトリック教会として建設されました。当時、井持浦小教区が管轄する巡回教会堂として、信者たちの心の拠り所となっていたようです。教会の建設は、幕末に大村藩から名目上の流刑として五島に送られた鶴田沢右衛門を中心に、同じく士族の永山平蔵や田原要蔵、そして地元のカトリック信徒たちの協力によって進められました。

資材は近くの星山から切り出された木材が使われ、信徒たちは力を合わせて木材を運び、教会を建て上げました。1879年には、ヨゼフ・ロカイン司教によって献堂祝別され、正式に教会としての役割をスタート。当時、日本では2番目に古い木造教会として知られていました。

時代の波と教会の終焉

しかし、時代の流れとともに、教会は徐々に衰退していきます。老朽化に加え、過疎化が進行し、信者数は減少。1985年、立谷教会は井持浦天主堂に統合され、その歴史に幕を下ろしました。

廃堂後も建物は残されていましたが、1987年、台風12号の猛威によって井持浦天主堂と共に倒壊。建物は失われ、跡地はしばらくの間、放置されることとなりました。

野外教会としての再生

1998年、立谷教会跡に再び光が灯ります。井持浦天主堂に保管されていたマリア像がこの地に戻され、安置されることになったのです。跡地は整備され、入口にはモニュメントが設置され、屋根のない野外教会として生まれ変わりました。

現在、立谷教会跡は、かつての教会を偲ぶ場所として、静かに佇んでいます。建物は失われましたが、マリア像は今もこの地を見守り続け、訪れる人々に安らぎを与えているでしょう。

所在地

長崎県五島市玉之浦町立谷337−1

参考文献

三沢博昭『大いなる遺産 長崎の教会―三沢博昭写真集』智書房、2007年。ISBN 4434108506。
雑賀雄二『天主堂 : 光の建築』淡交社、2004年。ISBN 4473031748。
木方十根; 山田由香里『長崎の教会堂』河出書房新社、2016年。ISBN 9784309762395。
『日本歴史地名大系 43 長崎県の地名』平凡社、2001年。ISBN 978-4-582-49043-5。
『角川 日本地名 大辞典 42 長崎県』角川書店、1987年。ISBN 4040014200。
雑賀雄二『天主堂物語』新潮社。ISBN 978-4103632023。
玉之浦町『玉之浦町郷土史』1995年。
井持浦カトリック教会『ルルド創100周年記念誌　井持浦カトリック教会』1999年。
『月刊聖母の騎士社2008年11月号』聖母の騎士社、2008年。
雑賀雄二『天主堂物語』新潮社。ISBN 978-4103632023。

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