竜二 (映画)

映画『竜二』について

『竜二』（りゅうじ）は、1983年に公開された日本映画で、金子正次が脚本と主演を務め、川島透が監督を担当しました。この映画は、暴力描写を抑えた珍しいヤクザ映画として評価され、全国公開後には大ヒットを記録しました。また、湯布院映画祭でのプレミア上映では喝采を浴び、多くの人々に感銘を与えました。

概要

本作は、主人公・花城竜二が過去のヤクザの世界から足を洗い、健全な生活を目指す物語です。主題歌には萩原健一の「ララバイ」が使用されており、映画の雰囲気を一層引き立てています。竜二の口上から生まれた「泣いてチンピラ」という言葉や、影響を受けた長渕剛の手法は、後の作品にも影響を与えています。

特に印象的なのは、主人公の娘・あや役を金子正次の実の娘である金子桃が演じている点です。映画の公開中の11月6日、金子正次は胃癌性腹膜炎により33歳という若さで亡くなりました。そのため、彼の遺作となったこの作品には、深い感情が込められています。

あらすじ

物語は、花城竜二が新宿の三東会というヤクザ組織の幹事として、違法なルーレット賭博を仕切るところから始まります。順調に見えた生活も、三年前の傷害事件による保釈金の支払いで思わぬ苦境に立たされます。妻・まり子は実家に帰ることを決意し、竜二も堅気に戻ることを考えるようになります。

竜二の新しい生活は、彼が酒屋の配達人として働くことで始まります。一緒に暮らすまり子と娘のあやとの3人家族は、つましいけれども幸せな日々を送りました。しかし、かつての仲間が現れ、徐々に竜二の心は揺れ動きます。兄弟分の一馬は麻薬中毒になり、竜二に金をせびります。こうして、彼は再びヤクザの世界に戻ることを悩むことになります。

キャスト

• - 花城竜二 (32): 演 - 金子正次

新宿のヤクザ組織の幹事。堅気に戻ろうとするが、過去や仲間の影に悩む。

• - 花城まり子 (30): 演 - 永島暎子

竜二の元妻。彼の過去を理解しつつも、再び家族を築こうと奮闘する。

• - 花城あや (3): 演 - もも

竜二の娘。家族の愛情に包まれた天真爛漫な女の子。

• - 直 (29): 演 - 佐藤金造

竜二の舎弟で、彼のヤクザとしての過去を象徴する存在。

• - ひろし (23): 演 - 北公次

竜二の後輩で、ヤクザ稼業の終焉を見届ける役どころ。

作品の特徴

『竜二』は、従来のヤクザ映画とは一線を画し、複雑な人間模様を描くことで評価されています。主人公が直面する悩みや、堅気になるという選択は、観客の共感を呼び起こしました。また、金子が監督に対して自身の思いを込めて制作したことが、映画全体に深みを与えています。

評価と影響

本作は興行成績も優れており、公開初日から好調な動きが続き、多くの観客を魅了しました。『竜二』は、1980年代の映画史においても重要な作品とされ、金子正次の存在を象徴する映画として語り継がれています。その後のヤクザ映画や人間ドラマに影響を与えた本作は、今もなお強い印象を残しています。

『竜二』は、暴力だけでなく人間の絆や葛藤を描いた作品であり、見る者に深い洞察を与えるものです。映画は金子の夢見た形として、彼の名前を今に伝えています。

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