童夢・F110

童夢・F110の概要

童夢・F110は、日本の株式会社童夢が日本自動車レース工業会（JMIA）との共同で開発したFIA-F4規格に基づくフォーミュラカーです。この車両は、2015年から2023年にかけてFIA-F4選手権のワンメイクマシンとして多くのレースに使用されました。

フォーミュラ4の背景

これまで、フォーミュラ4（F4）は地域ごとの団体やクラブが運営するカテゴリーとして独自に発展してきましたが、2014年に国際自動車連盟（FIA）がF4の規格を国際的に統一しました。この決定に対して、日本の自動車界における入門レーシングカーが消滅し、外国製の車両が台頭することを懸念する意見が出ました。そのため、JMIAは日本製のFIA-F4を開発し、GTアソシエーションと協力してこの流れを阻止しようと試みました。しかし、JAF-F4関連の団体からの批判も受けることとなりました。

開発と仕様

F110の開発においては、エンジンをトムスが、ギアボックスを戸田レーシングがそれぞれ製作するなど、JMIAのメンバー各社が共同で作業を進めました。トヨタ自動車もデザインプロセスで支援を行い、全体的な技術力の向上につながりました。

車両は2015年時点において、全長4,340mm、全幅1,738mm、そして車重610kg（ドライバーを含む）という設計がなされており、サスペンションやブレーキシステムも高性能な部品が採用されています。特に、ダブルウイッシュボーンを用いたサスペンションや、ADVICS製のブレーキは、レースでの性能を極限まで引き出すために重要な役割を果たしています。

安全性の向上

F110は、開発の過程で各年ごとに安全性を高めるための改良が施されてきました。2016年にはADR（アクシデント・データ・レコーダー）とスロットルフェールセーフのアップデートが行われ、以降も2017年にはFIAの規則変更に伴うテザー補強やヘッドレスト、シートの改良が加えられました。また、2018年には、他国での事故を受けてフロントアンチイントリュージョンパネルの追加も行われ、日本シリーズの最低車両重量が610kgに引き上げられることとなりました。

後継モデルと今後の展望

FIAの安全基準が厳しくなる中で、従来型のF110は2023年を以て使用が禁止されることから、後継車両「MCS4-24」が登場することになりました。ただし、2024年からは日本独自のFormula Beat（F-Be）でF110が受け入れられることも決まっており、レギュレーションに対応した改修が必要です。また、同年からはF110 CUPが始まり、西日本と東日本の王者が決定するイベントが行われます。

EVレーシングカーの展開

さらに、童夢は2019年3月にF110のモノコック及び主要コンポーネントを使用したEVレーシングカー用シャシーを供給する計画を発表しました。2020年1月には、F110シャシーを基にした「Mitsu-Bachi F110e」というワンメイクシャシーが、ERAエレクトリックレーシング・アカデミー・チャンピオンシップに採用される予定です。これにより、新たな電動化の流れにも対応する姿勢を示しています。

結論

童夢・F110は、制度の変化と技術の進化に柔軟に対応し続けることで、日本のレースシーンにおいて重要な存在となっており、今後の発展にも期待が寄せられています。

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