童蒙酒造記

童蒙酒造記について

『童蒙酒造記』は、江戸時代初期に成立した日本の重要な醸造技術書です。この文献は、特に酒造に関する詳細な知識が記載されており、江戸時代を通じて最も質が高く、情報量も豊富な作品とされています。「童蒙」という言葉は、「子どもや馬鹿者」といった意味を持ちますが、タイトルに使用されたことから、著者の謙遜な人柄が伺えます。この著作においては、酒造りに対する熱意と深い知識が示されていますが、著者の正体は不明です。

成立年代とその背景

本書の成立年代は明確には特定されていませんが、貞享3年（1686年）における米や酒の価格についての詳細な記述があり、その年代以降に成立したことは間違いありません。貞享4年（1687年）が成立年として推定されています。当時の米作の特異性から、遅れて書かれた可能性は低いと考えられています。この作品は、筆写本が多数存在し、明治時代末期からは翻刻本も数多く出版されています。

著者について

著者に関する情報はほとんど残っていませんが、自身が「鴻池流」の人間であると記していることから、鴻池流に属する蔵元の一人である可能性が高いです。また、商業的なセンスが伺える記述が多く見受けられ、この点でも著者の背景を推測する手がかりとなっています。

書の内容

『童蒙酒造記』は全5巻から成り立っており、当時の酒造りに関する多岐にわたる知識が網羅されています。特に、酒造りについての詳細な情報が豊富に含まれており、江戸時代における酒造に関する教科書としての役割を果たしています。

第1巻

第一巻では、酒に関する総論や歴史、種類、心得、専門用語や用具の解説が行われています。また、過去の酒造技術書から引用している箇所が多く、以前にも優れた文献が存在していたことが伺えますが、その正体は今もって謎に包まれています。

第2巻

第二巻では、特に南都諸白の製法が詳しく説明されており、菩提酛や煮酛の製法についても触れられています。これにより、当時の酒造りに関する技術的な側面が深く理解できます。

第3巻

第三巻では、鴻池流の製法が記述されています。現在ではこの醸造法は消滅してしまったため、非常に貴重な情報が含まれています。

第4巻

第四巻は、奈良流、伊丹流、小浜流、焼酎、味醂、麻生酒、忍冬酒、練酒、濁り酒など、さまざまな製法に関する詳細な情報を提供しています。

第5巻

最後の第五巻では、酛についての詳細が述べられており、判断基準や醗酵のタイミング、調整方法などが詳細に説明されています。この巻は、第三巻の補足的な役割も果たしています。

関連項目

『童蒙酒造記』は、日本酒に関する研究において非常に重要な位置を占めています。特に、著者として多くの人に知られる鴻池善右衛門や諸白、摂泉十二郷といったテーマも関連しており、酒造りの歴史や技術に興味のある人々にとって、非常に魅力的な資料となっています。

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