竹中藤右衛門

14代目竹中藤右衛門：日本の建設業界に貢献した生涯

14代目竹中藤右衛門（1877年-1965年）は、明治から昭和時代にかけて、日本の建設業界に大きな足跡を残した人物です。建築設計請負業者、実業家、そして政治家として活躍し、竹中工務店の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと家系

1877年、愛知県名古屋市で、12代目竹中藤五郎の次男として生まれました。彼の家系は、慶長15年（1610年）頃に初代竹中藤兵衛正高が創業した神社仏閣の造営を担う棟梁の家系であり、代々建築に携わってきました。幼少期から建築に関わる環境で育ち、名古屋高等小学校卒業後、大阪商業学校に進学。1895年には商業実習の一環で韓国に渡り、1年間行商を経験するなど、多様な経験を積みました。

竹中工務店の発展と近代化

1899年、父・藤五郎の急死を受け、兄・昇太郎が13代目藤五郎を継承する中、藤右衛門は神戸支店開設の中心人物となり、工事責任者として手腕を発揮しました。1909年、竹中は個人営業から合名会社へ組織変更し、同年5月16日、竹中工務店を設立。藤右衛門は14代目藤右衛門を襲名し、神戸に本店、名古屋に支店を置く体制を整えました。

1920年代に入ると、丸の内ビルディングの建設などにより、アメリカ式の近代経営への関心が高まりました。藤右衛門は、大林組一行と共に欧米視察を行い、帰国後、竹中工務店の経営近代化に積極的に取り組みました。その努力は、竹中工務店の更なる発展に繋がる重要な一歩となりました。

株式会社化と経営の多角化

1937年、竹中工務店は株式会社へと組織変更され、藤右衛門は社長に就任しました。1945年には長男の錬一が社長に就任し、藤右衛門は会長、その後相談役に就任。さらに、海外土木興業取締役会長、土木建築扶助会理事長などを歴任し、その影響力は建設業界全体に広がっていきました。

政治活動と晩年

1946年、貴族院勅選議員に任命され、同和会に所属して活動しました。貴族院廃止まで務めた後、1948年には衆議院不当財産取引調査特別委員会に証人喚問されるなど、政治家としても活動しました。建築業協会理事長、日本土木建築請負業者連合会会長なども務め、幅広い分野で活躍しました。

晩年は、建築業界の発展に貢献した経験を記した『私の思い出』を出版するなど、後世への貢献も果たしました。1965年、88歳でその生涯を閉じました。

功績と影響

14代目竹中藤右衛門は、単なる建築業者としてだけでなく、実業家、政治家として多方面で活躍し、日本の建設業界の発展に多大な貢献をしました。近代経営を取り入れ、企業の規模を拡大し、業界のリーダーとして、日本の建築業界に大きな影響を与えた歴史的な人物と言えるでしょう。彼の功績は、現在でも竹中工務店という企業名に刻まれています。

家族と親族

竹中家は代々建築に携わってきた家系であり、藤右衛門自身も多くの親族が建設業界や政財界で活躍しました。彼の家族、そしてその広大な親族ネットワークは、日本の社会構造を理解する上で重要な要素となります。

参考文献

菊岡俱也『新装版 建設業を興した人びと - いま創業の時代に学ぶ』彰国社、2012年
『日本の創業者 - 近現代起業家人名事典』日外アソシエーツ、2010年
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年
のじぎく文庫編『兵庫県人物事典 中巻』のじぎく文庫、1967年
* 『大衆人事録 第14版 近畿・中国・四国・九州篇』帝国秘密探偵社、1943年

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