竹内道雄

竹内道雄：大蔵省を牽引した官僚の生涯

竹内道雄（たけうち みちお、1921年3月17日 - 2004年2月27日）は、昭和期に日本の大蔵省（現財務省）で活躍した官僚です。東京府東京市（現在の東京都文京区）出身で、そのキャリアは大蔵事務次官という官僚の頂点にまで達しました。彼の生涯は、戦後の日本経済の変遷と深く結びついており、その政策判断は今日においても重要な教訓となっています。

エリートとしての出発

竹内は、誠之尋常小学校、東京府立第一中学校という名門校を経て、第一高等学校に進学しました。しかし、一浪して東京帝国大学法学部に入学という経歴からも、決して順風満帆なエリート街道を歩んできたわけではありませんでした。1944年9月、大蔵省にトップで入省し、理財局に配属されました。同期には、後に財務官やアジア開発銀行総裁となる吉田太郎一、関税局長となる赤羽桂らがいました。

理財畑での活躍

入省後、竹内は主に理財畑を歩み、その能力を発揮しました。1965年には、戦後初の赤字国債発行という重大な局面において、理財局国庫課国債発行準備室の設置に際し、総務課長としてその準備に尽力しました。この時、大谷邦夫国庫課長と共に、国債発行に向けた重要な役割を担いました。

要職を歴任

その後、竹内は近畿財務局長、大臣官房審議官（大臣官房担当）を経て、1969年には主計局次長に就任しました。理財畑出身でありながら、当時の事務次官であった澄田智にその能力を高く評価され、主計局の要職に抜擢されたことは、彼の幅広い知見と優れた能力を物語っています。

1971年には大臣官房長、1973年には理財局長、1974年には主計局長兼会計事務職員研修所長を歴任し、1975年から1977年まで大蔵事務次官を務めました。

退官後の活動

大蔵事務次官退任後も、竹内の活躍は続きました。1978年には日本輸出入銀行総裁、1982年には東京証券取引所理事長に就任し、日本の金融・証券市場の発展に貢献しました。特に、東証理事長時代には、澄田智が日銀総裁候補として副総裁にあった際、病状を隠蔽したエピソードは、当時の政界・財界の裏側を垣間見せる出来事として知られています。

また、山一證券破綻事件を契機に設立された資本市場研究会の理事長も務め、1993年には勲一等瑞宝章を受章、1999年からは大蔵省参与として、後進の育成にも尽力しました。

人物像と評価

竹内は、東京大学時代にボート部に所属しており、東大ボート部から大蔵省に進む官僚の先駆けとなりました。後輩の長岡實もその流れでスカウトしています。理財局総務課で新人だった野口悠紀雄は、竹内の能力を「どんなに込み入った話も瞬時に理解し、その先の先まで読んでいる」と評し、「火星人だと思っている」とまで述べています。このエピソードからも、竹内の並外れた能力がうかがえます。

一方で、バブル崩壊とその処理の失敗により、大蔵省・日銀に対する批判が強まる中で、竹内は、大蔵省の権限拡大に伴い、職員の意識や気構えが追いついていなかった点を指摘し、組織の課題にも言及しました。

竹内道雄は、その卓越した能力と先見性で、戦後の日本経済を支えた重要な人物の一人です。彼の業績は、日本の経済史において、今後も語り継がれていくことでしょう。

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