竹村俊則

竹村俊則：京都の郷土史を鮮やかに描き出した著述家

竹村俊則（たけむら としのり、1915年2月7日 - 1999年6月7日）は、京都をこよなく愛し、その歴史と文化を深く探求した著述家、郷土史研究家です。京都市に生まれ育ち、京都の魅力を伝える数々の著作を世に送り出しました。

生涯

京都市上京区で京料理の仕出し屋の一人息子として生を受けた竹村は、幼い頃から故郷・京都への深い関心を抱いていました。京都市立商業実修学校を卒業後、1945年の終戦直後から、郷土史・民俗研究家である田中緑紅に師事し、著述家、郷土史研究家としての道を歩み始めます。京都府庁、通商産業省、京都国立博物館などにも勤務しました。

1946年からは田中緑紅が主宰する郷土文化研究会の会報編集や執筆を担当し、1951年からは史迹美術同攷会の『史迹と美術』へ寄稿を開始。1952年3月には、藪田嘉一郎と共に「京都史蹟研究会」を創立しました。この研究会は後に「京都史蹟会」との合併・分離を経て、1957年頃より「京都研究の会」として活動します。また、史迹美術同攷会の会員としても活動しました。

代表作は、『新撰京都名所図会』（全7巻、1957年より）と、その増補改訂版である『昭和京都名所図会』（全7巻、1980年）。その他にも、京都に関する多くの著書を出版しました。1999年6月7日、京都市内の病院で腎不全のため84歳で生涯を閉じました。

『新撰京都名所図会』

少年時代から秋里籬島の『都名所図会』（1780年）に感銘を受けていた竹村は、現代版の京都図会を著すことで、今と昔を対比させ、分かりやすく解説することで、故郷・京都への恩返しになると考え、『新撰京都名所図会』の執筆を決意します。自費出版のための資金調達を試みましたが、これは失敗に終わります。

その後、1957年5月から、白川書院の創業者である臼井喜之介が編集発行する月刊誌『東京と京都』で「東山の部」の連載を開始。当初は下書きのつもりで執筆していましたが、連載が好評だったため、4回目の連載からは単行本化を前提とした内容に改められました。1958年10月1日に第1巻が刊行。竹村自身が1964年頃に病に倒れたこともあり、執筆期間は1957年4月から1964年10月までの7年6ヶ月に及びました。1965年1月に第6巻・第7巻が刊行され、『新撰京都名所図会』はついに完成。1965年4月24日には、京の名士や友人60名を招いて出版祝賀会が開催されました。なお、連載自体は『東京と京都』1965年8月号の第97回まで継続されています。

項目数は約1700、挿絵は約400枚。観光案内に偏らず、かといって堅苦しくなりすぎないように留意して執筆されました。鳥瞰図は竹村自身が現地でのスケッチを元に、他の資料や写真を参考にしながら描いたものです。

『昭和京都名所図会』

『新撰京都名所図会』は好評を博し、何度も版を重ねましたが、1974年に臼井が亡くなり、白川書院が経営難に陥ったことで絶版となってしまいます。竹村は、『新撰』で書き残したものや誤りを修正したいと考えていました。

高度成長期を経て、京都の街並みは大きく変化していました。昭和30年代の京都の姿を記録できたことは幸いであり、竹村自身も「本書が真に利用されるのは、百年二百年後にあると思う」と述べています。しかし、内容が古くなったこと、市電廃止により電停を基準とした案内が不便になったことなどから、1980年より増補改訂を行い、駸々堂出版から『昭和京都名所図会』を刊行。1989年まで9年間をかけて全7巻を完結させました。全巻で1870項目、挿絵は315枚に及びます。

竹村俊則は、京都の歴史と文化を後世に伝える貴重な遺産を数多く残しました。その功績は、京都新聞文化賞や京都市観光協会賞など、数々の賞を受賞したことからも明らかです。彼の著作は、今もなお多くの人々に愛読され、京都の魅力を再発見するきっかけとなっています。

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