藪田嘉一郎

藪田嘉一郎（1905年3月28日 - 1976年1月13日）は、昭和期の編集者・歴史家であり、特に古代史研究において独自の視点と大胆な仮説を打ち立てた人物として知られています。松本清張が師事したことでも知られ、その学問的探求心と幅広い知識は多くの人々に影響を与えました。

経歴

京都市に生まれた藪田は、1924年に京都市立第一商業学校専修科を卒業後、1925年に京都帝国大学文学部史学科選科に入学しますが、1928年に中退します。その後、学究の道ではなく、実社会で編集者としてのキャリアをスタートさせます。

1928年に至誠堂に入社し、1932年には飛鳥園、1933年には日出芸林社へと移籍し、書籍の編集者として活躍しました。1934年には株式会社便利堂に入社し、1950年には同社の取締役に就任しますが、1951年に退社。同年、自ら綜芸舎を創立し、古代史研究、能楽研究、易学研究に没頭します。綜芸舎は、文献、美術、石造文化財などの史資料を使った研究拠点となり、多くの著作・論文がここから生まれました。また、寿岳文章らと共に和紙の研究を行い、新村出らと『和紙研究』を刊行するなど、その関心は多岐にわたりました。

1965年に出版事業を後継者に委ねた後は、研究・著述に専念。また、大槻憲二が創設した東京精神分析学研究所の所員でもありました。

研究活動

藪田の学問的特徴は、既存の学説にとらわれない大胆な仮説を打ち立てる点にありました。中でも、出雲国風土記偽書説は、当時の学会に大きな波紋を呼びました。文献に基づいた緻密な考証に加え、独自の解釈を展開する藪田の姿勢は、多くの人々を魅了し、特に作家・松本清張は、藪田の学問に対する真摯な姿勢と深い知識に感銘を受け、師事するようになったと言われています。

著書

『日本上代金石叢考』
『日本年号索引 改訂増補版』
『宝篋印塔の起原・続五輪塔の起原』
『能楽風土記 能楽の歴史地理的研究』
『日本古代文化と宗教』
『石刻 金石文入門』
『経塚の起源』

その他、編纂、翻訳書も多数あります。

関連人物

松本清張：藪田の学問的影響を受け、『火の路』執筆時に協力を得た。
* 饗庭蘆穂：みうらじゅんの母方祖父で、藪田と拓本を通じて交流があった。

藪田嘉一郎は、既存の学説に疑問を呈し、独自の視点から古代史研究に挑んだ、孤高の学者でした。その研究成果は、現在でも多くの研究者に影響を与え続けています。没後、綜芸舎は長男の夏雄が継ぎ、その精神は受け継がれています。

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