竹田直樹 (景観学者)

竹田 直樹

竹田 直樹（たけだ なおき）氏は、1961年に生まれ、日本の景観学、ランドスケープアーキテクチャー、絵画、そして美術制作と、多岐にわたる分野でその才能を発揮している人物です。現在は兵庫県立大学大学院緑環境景観マネジメント研究科の准教授として教鞭を執るとともに、兵庫県立淡路景観園芸学校では主任景観園芸専門員として実践的な活動にも関わっています。

経歴と学歴

兵庫県姫路市で誕生し、東京で育ちました。学問の道は千葉大学から始まり、1984年に同学園芸学部造園学科を卒業。さらに大学院自然科学研究科へと進み、1991年に単位を取得して退学します。造園学だけでなく、美術や都市環境への深い関心は学術的な成果へと結びつき、1992年には「都市環境における彫刻の導入手法に関する研究」で千葉大学より博士（学術）の学位を授与されました。

専門家としてのキャリアは、1997年に株式会社都市緑地研究所の取締役東京事務所長に就任したことから本格化します。その後、1999年には現在の兵庫県立大学の前身である姫路工業大学の准教授となり、教育・研究の場で後進の育成にも力を注ぐことになります。

研究、批評、そして制作活動

竹田氏の活動領域は非常に幅広く、パブリックアートの研究、景観に関する深い考察、美術批評、実践的なランドスケープデザイン、そして自らの手による美術作品の制作と、多角的なアプローチで世界と向き合っています。特に1990年代は、日本のパブリックアートという分野において、その研究基盤を確立する上で先駆的な一連の研究に取り組みました。これと並行して、日本の景観に関する理論的研究と現場での実務にも精力的に携わりました。

2000年代にかけては、美術専門誌やライフスタイル誌など多様な媒体で、日本の現代美術に関する批評や連載を多数執筆し、美術批評家としての確固たる地位を築きます。この時期から、植物、庭園、そして私たちを取り巻く風景といった自然や環境の要素にインスピレーションを得た美術作品の制作を開始し、積極的に作品を発表するようになります。彼の作品は、自然と人工、歴史と現代、個人と公共空間といったテーマを横断し、鑑賞者に新たな視点を提供します。

主なランドスケープ・美術作品

竹田氏は、研究室の活動や他分野の専門家との連携を通じて、数多くのランドスケーププロジェクトやアートプロジェクトを実現させています。主な作品・活動には以下のようなものがあります。（共同制作を含む）

さいたま新都心アートプロジェクトのディレクション（1996-1999年）
『空き家リノベーションプロジェクト』（兵庫県淡路島、2005年）
WANAKIO『神々との恋人たちのために－ガシュマル・エアフォース』（那覇市、2005年）
『向島路地園芸プロジェクト』（東京都墨田区、2006年）
向島芸術計画2007『森の素展』（東京都墨田区、2007年）
旧中工場アートプロジェクト『資本主義の庭』（広島市、2007年）
琵琶湖ビエンナーレ『欲望を追加した古い庭』（近江八幡市、2007年）
越後妻有アートトリエンナーレ参加（2009年）
『里山復興事業（その1）森の素プロジェクト（その2）風景画プロジェクト』（十日町市）
広島アートプロジェクト『被爆夾竹桃の森プロジェクト』（広島市、2010年）
『森の宝石プロジェクト　uccieno』（新潟市、2011年）

これらのプロジェクトは、都市空間におけるアートのあり方、地域資源の活用、歴史の継承、そして人間と自然の関係性など、彼の関心領域を反映したものです。

主な著書

研究者・批評家としての竹田氏は、その専門知識を多くの著書として世に送り出しています。特にパブリックアートに関する著作は、日本のこの分野の理論的基盤を形成する上で重要な役割を果たしました。

『パブリック・アート入門　自治体の彫刻設置を考える』（公人の友社、1993年）
『日本のパブリック・アート』（誠文堂新光社、1995年）
『日本の彫刻設置事業　モニュメントとパブリックアート』（公人の友社、1997年）
『やさしい風景学　1990-1996年の日本』（マルモ出版、1997年）
『アートを開く　パブリックアートの新展開』（公人の友社、2001年）
『続・やさしい風景学　1996-2000年の日本』（マルモ出版、2002年）
『造園がわかる本』（彰国社、2006年）

これらの著作を通じて、彼はパブリックアートや景観論に関する専門的な知見を分かりやすく解説し、一般読者を含む多くの人々にこの分野への関心を促しています。

竹田直樹氏は、景観学、ランドスケープ、そして美術という複数の視点を行き来しながら、私たちが暮らす環境や文化に対する理解を深めるための問いを投げかけ続けています。その研究、実践、そして創造的な活動は、現代社会における人間と自然、そしてアートの関係性を考える上で、重要な示唆を与えています。

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