笑う警官 (佐々木譲)

笑う警官

佐々木譲の警察小説『笑う警官』は、北海道警を舞台にした道警シリーズの第一作です。この作品は、2005年の『このミステリーがすごい!』で10位にランクインするなど、高い評価を受けています。北海道警の裏金事件をモチーフにしており、警察内部の不正や権力構造に切り込んだ内容が特徴です。

概要

『笑う警官』は、警察小説でありながら、人間の心理や社会の闇を描いた作品としても評価されています。物語は、札幌で発生した女性警察官の変死事件から始まります。捜査が進むにつれて、事件は警察内部の不正と深く関わっていることが明らかになっていきます。主人公の刑事たちは、事件の真相を追う中で、組織の壁や陰謀に立ち向かうことになります。

本作は、映画化やテレビドラマ化もされており、様々なメディアで楽しまれています。映画版は角川春樹が監督を務め、話題となりました。テレビドラマ版では、主人公の変更や設定の変更など、原作とは異なる展開がなされています。

タイトルについて

タイトルの『笑う警官』は、スウェーデンの警察小説「マルティン・ベックシリーズ」の一作と同名ですが、これは著者である佐々木譲が角川春樹に同シリーズのような警察小説を依頼されたことがきっかけです。元々の単行本タイトルは『うたう警官』でしたが、これは警察内部の隠語で「自白する」「内部告発する」という意味を持つ言葉です。しかし、読者に意味が伝わりにくいという意見があったため、映画化を機に『笑う警官』に改題されました。

あらすじ

物語は、札幌のマンションで女性警察官の水村朝美が変死体で発見されるところから始まります。捜査が開始されると、被害者が道警本部の婦人警官であることが判明。さらに、事件の容疑者として、被害者の恋人である津久井卓が浮上します。津久井は覚醒剤の常習者であり、拳銃を所持している可能性が高いことから、警察内部では射殺も辞さない構えで捜査が進められます。しかし、過去に津久井とおとり捜査で組んだことのある刑事の佐伯宏一は、津久井の無実を信じ、独自に捜査を開始します。

佐伯は、津久井が道警の不正を告発する証人として道議会に出席する予定であることを知ります。射殺許可は、それを阻止するための口封じではないかと疑念を抱いた佐伯は、仲間を集めて裏捜査を開始します。しかし、捜査チームの中には内通者がいる可能性もあり、佐伯たちは時間との戦いを強いられます。果たして、佐伯は津久井を無事に議会に送り届けることができるのか、そして真犯人を見つけることができるのかが、物語の鍵となります。

登場人物

主要人物

佐伯 宏一（さえき こういち）
主人公。大通署刑事課の警部補。過去におとり捜査で津久井と組んだ経験から、彼を深く信頼している。音楽好きで、サックスを趣味としている。
津久井 卓（つくい すぐる）
道警本部生活安全部銃器薬物対策課所属の巡査部長。水村の恋人とされており、容疑者として扱われる。佐伯とは過去におとり捜査でコンビを組んだ。
新宮 昌樹（しんぐう まさき）
大通署刑事課に配属されたばかりの若い刑事。佐伯の捜査に協力する。
小島 百合（こじま ゆり）
大通署生活安全課総務係。佐伯の捜査に協力する。
植村 辰男（うえむら たつお）
刑事課盗犯係のベテラン刑事。ダジャレ好き。
町田 光芳（まちだ みつよし）
大通署刑事課強行犯係の捜査員。
諸橋 大悟（もろはし だいご）
千歳署総務課所属のベテラン刑事。
岩井（いわい）
町田の部下。津久井が「うたった」ことを知りチームを抜ける。
大森 久雄（おおもり ひさお）
大通署交通課所属。事件の性急さに疑問を持ち佐伯に協力する。

警察官

水村 朝美（みずむら あさみ）
道警本部生活安全部防犯総務課所属の巡査。元ミス道警で、殺害される。
永末（ながすえ）
大通署鑑識課員。
長正寺 武史（ちょうしょうじ たけし）
道警本部機動捜査隊所属の警部。
石岡 正純（いしおか まさずみ）
道警本部生活安全部長。警察庁から送り込まれてきた。
浅野 忠雄（あさの ただお）
道警本部警備部長。事件を指揮する。

その他

笠井 寛司（かさい かんじ）
焼尻駐在所の警察官。裏金作りマニュアルをリークしたと疑いをかけられている。
前島 博信（まえじま ひろのぶ）
中古車の密輸容疑で逮捕された男。マカロフを不法所持していた。
太田（おおた）
水村朝美の遺体が発見されたマンションの管理人。
安田（やすだ）
元警察官。ジャズバー「BLACK BIRD」のマスター。
谷川 五郎（たにがわ ごろう）
水村朝美殺害現場のマンションにあった液晶テレビを質屋に売ろうとした。

映画

2009年に公開された映画版は、角川春樹が監督を務め、大森南朋、松雪泰子、宮迫博之らが出演しました。映画版では、原作とは異なる設定や展開が盛り込まれており、原作ファンからも賛否両論がありました。主題歌にはホイットニー・ヒューストンの「夢をとりもどすまで」が起用されました。

キャスト

佐伯宏一：大森南朋
小島百合：松雪泰子
津久井卓：宮迫博之
新宮昌樹：忍成修吾
植村辰男：螢雪次朗
町田光芳：野村祐人
岩井隆：伊藤明賢
安田：大友康平
足の悪いチンピラ：松山ケンイチ
テレビキャスター：大和田伸也
百条委員会委員長:平泉成
谷川五郎：中川礼二
水村朝美：乙黒えり
浅野貴彦生活安全部長：矢島健一
石岡正純刑事部長：鹿賀丈史

スタッフ

原作：佐々木譲
脚本・製作総指揮・監督：角川春樹
脚本：橋本匡弘
音楽：大島ミチル
撮影：仙元誠三
主題歌：ホイットニー・ヒューストン「夢をとりもどすまで」

テレビドラマ

2013年には、TBS系列で「北海道警察 笑う警官」のタイトルでテレビドラマ化されました。ドラマ版では、主人公が佐伯から小島に変更されるなど、原作から大きく変更された点が特徴です。

まとめ

『笑う警官』は、警察内部の不正をテーマにした社会派ミステリーでありながら、人間ドラマとしても楽しめる作品です。原作小説だけでなく、映画やテレビドラマなど、様々なメディアで展開されているため、多くの人に親しまれています。警察小説ファンはもちろん、社会派ドラマが好きな人にもおすすめできる作品です。

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